会社と従業員の関係性は「契約」と「信頼」によって決まる!

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従来、日本の雇用社会で、会社と従業員との関係を作るのは、「信頼」のみでした。

契約書や就業規則がなかったり、労働基準法を守らなくても糾弾されることが少なかったです。

現在、「働き盛りの男性」のみでなく、高齢者、女性、外国人など、働く人も多様になっています。

そして、世の中の情報を手に入れるのが容易になり、従業員も知識を身につけるようになりました。

会社がルールや自分との約束事を守っているかどうかが、自分でも判断できるようになったのです。

会社と従業員とのルールや約束事を記したものが「契約」です。

今回は、会社と従業員との間の「契約」と「信頼」のポイントを説明します。

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会社と従業員との「契約」関係とは?

会社と従業員も、「契約」で結ばれているものなの?

「労働契約」を結ぶことになるよ。従業員の働きに対して、会社がお給料を支払うという関係になるね

「労働契約」って聞いたことがあるよ! 労働契約は、会社がお給料を支払っていれば問題ないのかな?

労働契約書や就業規則を作成して、労働契約の内容をはっきりさせておくことが大切だよ

本来、「契約」とは、当事者間による意思表示と承諾で成立します。

雇用関係でいうと、会社が「働いてください」、従業員が「働きます」といえば、労働契約は成立します。

この約束に加えて、従業員の働きに対し、会社がお給料を支払うと、労働契約が成立していることが明らかになります。

従業員が働き、それに対して会社が賃金を支払うという雇用関係についてルールを定めたのが、労働基準法です。

契約開始時に契約書をつくる

ところが、通常の契約と異なり、会社と従業員との関係はアンバランスです。

たいてい、従業員よりも会社の方が立場が強くなっています。

口約束やお給料の支給だけでは、契約の内容がはっきりせずに認識の齟齬が生じ、トラブルに発展してしまいます。

そのため、労働契約を開始するにあたっては、契約の内容を書面に残すことが求められています。(労働契約法第4条2項)

つまり、雇用関係においても「契約書」を作成して、会社と従業員の双方で内容を確認することが大切なのです。

名称は、「労働契約書」「雇用契約書」「労働条件通知書」のいずれでも構いません。

労働契約開始時に従業員に提示しなければならない事項は決まっています。

それは、次の14個です。1〜6は、5の昇給に関する事項を除き、書面で提示しなければなりません。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  4. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  5. 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  7. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  8. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  9. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  10. 安全及び衛生に関する事項
  11. 職業訓練に関する事項
  12. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  13. 表彰及び制裁に関する事項
  14. 休職に関する事項

パートタイマーや有期で雇用する従業員を雇うときには、1〜6に加えて、次の4つも書面で明示する必要があります。

  1. 昇給の有無
  2. 退職手当の有無
  3. 賞与の有無
  4. 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

1〜3については、正社員は「就業規則」で示されていることが多いですが、パートタイマーなどのいわゆる「非正規社員」には、明らかになっていないことが多いため、特別に追加されているものと思います。

4については、パートタイマーや有期で働く従業員が、何かに困ったときに相談できる体制を、会社は整えておかなければならないとされていることから、挙げられています。

この名称に限られませんし、組織、部署、個人を問いません。

たとえば、人事部長の名前と連絡先を記載することが考えられます。

「労働条件通知書」のひな型は、厚生労働省が配布しています。

厚生労働省「労働条件通知書」(外部リンクが開きます)

上記の書面で提示しなければならない事項を確認して、労働契約開始時に労働契約の内容を明確にしておきましょう。

就業規則をつくる

日々の会社におけるルールを明確にしておくのは、「就業規則」の役割です。

労働契約を開始する際に労働条件を明らかにする契約書に加えて、就業規則を作成することも大切です。

就業規則に定めた労働条件は、事業場で統一したルールを定めて、入社時に「誓約書」を提出させたり、従業員に周知することで、労働契約の内容になります

事業場とは、会社全体ではなく、本社、支店、支社など、基本的には「場所」で単位を考えます。

法的には、事業場において常時使用している従業員が10人以上になったら、就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出て、従業員に周知しなければなりません。

つまり、たとえば、会社全体では18人の従業員を使用していて、本社と支社でそれぞれ9人使用していたら、就業規則を作成する法的な義務はありません。

就業規則に定めなければならない事項は、労働基準法で定められています。これらの内容が欠けた就業規則は、このかけた部分については、原則、労働基準法の内容が自動的に適用されることになります。

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  2. 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  4. 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  5. 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
  6. 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
  7. 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  8. 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  9. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  10. 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
  11. 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

厚生労働省は「モデル就業規則」を配布していますが、本当に自社の実態にあった就業規則を作成するには、別の方法をとった方がよいと思います。

書店にいけば就業規則に関する書籍が売っていますし、就業規則を作成する専門家もたくさんいます。

「最初が肝心」ですので、就業規則を新たに作成される際には、情報を収集してよく吟味した方がよいでしょう。

MEMO

労働契約は口頭での約束や賃金を支払うことによって成立する。しかし、労働契約書や就業規則を作成して、労働契約の内容や労働条件を明確にしておくことが、トラブル防止のためには大切なこと。

会社と従業員との「信頼」関係とは?

契約書や就業規則で労働契約の内容をはっきりさせておくことが大切なんだね

それと同じくらい大切なのが、会社と従業員との間で信頼関係をきずくことだよね

信頼関係ってどうやってきずけばいいんだろう?

従業員の時間と健康を大切にすることがポイントだと思うよ!

お互いに決めたルールを守ることは必須だよね

労働基準法などの法律を守ることは、もちろん大切なことです。

会社で法違反があり、労働基準監督署がやってきて勧告がなされたら、その内容は是正しなければなりません。

しかし、日々業務をしていて、常に労働基準監督署からチェックされるわけではありません。

日々の会社の運営は、会社と従業員の信頼関係によって進んでいきます。

会社と従業員間のトラブルが増えている

昔は、労働基準法などについての情報を得ることが難しかったので、泣き寝入りも多かったと思います。

でも今は、法律の内容や、他の会社がどうしているかなどの情報を得ることが簡単になりました。

「うちの会社はおかしいのでは?」と思う機会も増えていると思います。

実際、会社と従業員との間のトラブルは、増えています。

働く人は、職場のトラブル(一般的に「紛争」といいます)について、全国にある「都道府県労働局」で相談することができます。

その相談件数が、年々増えているのです。

JILPT「早わかり グラフでみる長期労働統計」より

2002年度には10万3,194件だった相談件数が、2019年には27万9,210件に増加しました。

しかもその相談内容の4分の1は、「いじめ・嫌がらせ」に関することです。

多くの人が不満に思っているのは、「労働契約の内容」ではないのです。

法律を守ることより信頼関係の構築の方が大切

労働基準法は、職場の労働条件の最低基準になります。

労働契約書や就業規則に記載する内容が、労働基準法のルールに満たなければ、労働基準監督署に「是正しなさい」と言われます。

たとえば、休日が多い会社で従業員がハッピーに働いていたとしても、年次有給休暇を取らせなければ、法違反になってしまうのです。

逆に、年次有給休暇は取得させるけれど、休日が少なく残業が多い会社はどうでしょうか。

法違反はしていないけれど、従業員に不満は溜まっていくかもしれません。

このように、労働基準法は、「守っているか守っていないか」という判断基準しかなく、法律を守っている会社がいい会社だとは限らないという特徴があります。

会社と従業員との間でトラブルになるのは、信頼関係が崩壊したときです。

従業員に不満が溜まっていったり、あるいは従業員が会社のルールを守らないなどによって、信頼関係は崩れていきます。

信頼関係が崩壊するから「会社は法律を守っていない!」と問題にされるのです。

信頼関係があれば、従業員は「会社はすべての法律を守っているわけではないけれど、とてもよくしてもらっているし、働きやすい」と考えるでしょう。

法律を守ることはもちろん大切ですが、会社と従業員との関係が強固であれば、直ちに問題にはならないのです。

とはいえ、その信頼関係を築くには、具体的な行動が大事です。

それには、法律や労働契約で互いに決めたルールを守ることと、従業員の時間や健康を大切にすることが重要だと思います。

MEMO

法違反が直ちに問題になるわけではないし、法律を守る会社がいい会社だとも限らない。しかし、会社と従業員の信頼関係を築くには、法律や労働契約の内容を守ることと、従業員の時間や健康を大切にすることが重要。

まとめ

  • 会社と従業員との関係を築くには、契約と信頼の2つが大切。
  • 契約の内容は、労働契約の開始時に労働契約書を交わすことと、就業規則を作成して従業員に周知することによって、明らかにしておく。
  • 信頼関係は、法律や労働契約の内容を守ることと、従業員の時間や健康を大切にすることによって、つくられる。

会社と従業員の関係性においては、契約と信頼の2つがポイントになるんだね。最後まで読んでくれてありがとう!

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