【FAQ】採用において求人応募者から取得すべき情報

社労士のシモデ(@sr_shmd)です。

突然ですが人事労務に関するクイズです。

採用を決めるとき、応募者からどのような情報を取得すればよいでしょうか?
答えは次のうちどれでしょう?
(1) 学歴・職歴・資格について
(2) 前職を退職した理由
(3) 健康に関する情報
(4) 家族に関する情報
(5) 結婚・妊娠の予定について

正解は・・・ある意味で(1)〜(5)のすべてが正解ですが、「(2) 前職を退職した理由」と「(3) 健康に関する情報」が重要です!

この記事では、採用において応募者から取得すべき情報について解説します。

シモデ
シモデ

この記事は次のような人にオススメです!

  • 採用を担当している人事担当者
  • 面接を控えている求人応募者
  • 社労士試験の受験生

業務に関することはすべて確認する

採用において求人への応募者から取得すべき情報は、原則、「業務に関することすべて」です。

なぜなら、会社が応募者に対して十分に確認しなかったことについて内定後や入社後に虚偽だと分かったとしても、簡単に内定拒否や解雇ができないからです。

ある事柄について十分に確認しなかったのに、それが虚偽だと分かったからといって内定拒否や解雇をすると、会社にとって業務遂行上重要な事柄ではないと判断され、内定拒否や解雇が無効になる可能性があります。

シモデ
シモデ

以下で解答(1)〜(5)について検討してみましょう

学歴・職歴・資格について

まず「(1) 学歴・職歴・資格について」は、通常、履歴書に記載してある内容です。

たとえば、特定の資格がないと従事できない業務を行わせる場合や、その資格を所有していなければ採用をする意味がない場合は、証明書等も提出させるべきでしょう。

十分に確認した上で、重大な経歴詐称等が判明した場合には、内定拒否や解雇の理由として説明できる可能性が高まります。

家族に関する情報

次に「(4) 家族に関する情報」は、業務自体には関係ないともいえます。

以下の記事でも紹介したように、家族に関する情報は、就職差別につながるおそれがある事項に挙げられています。

しかしながら、会社として何か配慮するべきことがあるかを確認するために聞くといった目的で、面接中の会話に出てくることはあるでしょう。

ただ、会社として聞く必要がなければ聞かなくても構いません。

なお家族に関する情報は、入社時に、社会保険等の手続きに必要な範囲内で取得する機会があります。

結婚・妊娠の予定について

「(5) 結婚・妊娠の予定について」も、「(4) 家族に関する情報」と同様、業務自体には関係ないともいえます。

しかしながら、こちらも、会社によっては配慮の必要性や業務の調整を検討するために聞いておきたいかもしれません。

ただ、「(4) 家族に関する情報」と異なり注意が必要なのは、男女差別につながりかねないことです。

女性にだけ結婚や妊娠の予定を聞いて、それを採用の判断基準にすることは、男女雇用機会均等法に抵触すると考えられています。

採用基準は、外部に公開するわけではないから支障ないと思われるかもしれません。

しかし、現在はSNSの普及もあり、一般の人々の声が容易に拡散されます。

会社の評判を下げないためにも、もしも会社として結婚の予定等を聞く必要があるのなら、男女両方に聞くようにしましょう。

「配慮や業務の調整を検討したいから」など、聞く理由も説明するとより丁寧だと思います。

前職を退職した理由を聞く!

(1)〜(5)の中でとくに重要な情報の一つ目が、「(2) 前職を退職した理由」です。

これは、ポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも重要だと考えます。

たとえば退職理由は、前の職場では経験や成果を生かしてステップアップできないが、自社ではできそうと考えているとか、実現する意欲があるといったことを判断する材料になります。

逆に前の職場の愚痴が出てきたり、単に人間関係が嫌になって辞めたりしたのなら要注意です。

ある人にとって完璧な人間関係の職場というのは存在しないでしょうから、同じ理由で辞めてしまうことが想定されます。

そのほか前職の給与やその他の労働条件など、応募者が働く上で大切にしている価値観を聞き出せる質問が「(2) 前職を退職した理由」です。

健康に関する情報を聞く!

また、応募者が会社が求めている程度の労務提供ができるかについて、健康情報を取得することも必要です。

入社間もない従業員が私傷病により休んだ場合、大企業ならば休職制度を適用する体力があるかもしれませんが、中小企業ではそうとは限りません。

そのため、一般的な健康診断の診断結果を提出してもらうのは、一つの方法だと考えます。

たとえば週5日働いて欲しいのなら、その労務提供ができる健康状態かどうかを確認するのは会社の責任です。

確認せず内定を出して、後に業務に耐えられないような健康状態だと判明しても、簡単に内定取り消しや解雇をすることはできません。

応募者が虚偽の情報を伝えていたのでない限り、確認しなかった会社が悪いことになってしまいます。

なお雇用時に必要な健康診断は、入社3ヶ月前程度の診断結果であれば、採用の過程で提出してもらった診断結果に代えることができます。

また、健康情報を取得するといっても、応募者本人の同意の上で行うのが原則です。

HIV抗体検査やB型肝炎ウイルス感染検査を同意なく取得した事例では、プライバシー侵害として違法と判断されています。

一般的な健康診断の項目だけではなく、業務上病歴も取得する必要がある場合には、とくに注意をしてください。

採用において応募者から取得すべき情報まとめ

採用を決めるとき、応募者からどのような情報を取得すればよいでしょうか?
業務に関する情報はすべてです。確認していない事柄を理由に、内定取り消しや解雇をすることは非常に難しくなります。とくに前職を退職した理由と、会社が求める程度の労務提供をできる健康状態かどうかを把握することが重要だと考えます。