答えは、次のうちどれでしょう?
A 何を聞いてもいい
B プライベートのこと以外なら何を聞いてもいい
C 個人と家族のこと以外なら何を聞いてもいい
D 応募者が嫌そうな顔をしたら聞くのを止めればいい
E 例外はあるが何を聞いてもいい
正解は・・・A〜Eのすべてが、ある意味で正解ですが、Eが一番の正解です!
「例外はあるが・・・」ということは、「原則は何を聞いてもいい」のですが、意外ですよね。
以下に、考え方のポイントをご紹介します。
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会社が持つ「採用の自由」

内定を出す前の、会社と応募者という関係のうちは、何の契約関係にもありません。
募集する会社も、求人に応募してきた人も、誰と労働契約を結ぶかは自由です。
つまり、会社には「採用の自由」が与えられており、応募者には「職業選択の自由」が与えられています。
会社は、自社のビジョンや風土に合わせて、採用人数や募集ルート、求める人物像などを決めることができます。
また、応募者の中から誰を選ぶかも会社に裁量があります。
採用した人やお断りした人に、採用基準を開示する法的な義務はありません。
日本の雇用社会では、解雇がむずかしいことからも、採用の自由は広く認められています。
しかし、「自由」には「責任」が伴います。
自由だからといって、めちゃくちゃしていいわけではありません。
たとえば、面接の場で恫喝や強要、脅しをしてはいけないのは当然ですよね。
また、性別のみを理由に違う基準を設けることも禁止されています。
採用の自由には、公共の福祉や人権・労働者保護の制約があるのです。
厚生労働省のパンフレット

この「公共の福祉や人権・労働者保護」の内容が具体的に記載されているのが、厚生労働省の「公正な採用選考を目指して」というパンフレットです。
採用時に行うと就職差別に繋がるおそれがあるとして、以下の14事項を挙げています。
- 本籍・出生地に関することの把握
- 家族に関することの把握
- 住宅状況に関することの把握
- 生活環境・家庭環境などに関することの把握
- 宗教に関することの把握
- 支持政党に関することの把握の把握
- 人生観・生活信条などに関することの把握
- 尊敬する人物に関することの把握
- 思想に関することの把握
- 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関することの把握
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関することの把握
- 身元調査などの実施
- 本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
- 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
確かに、これらへの返答によって意味もなく不採用を決定することは、差別的ではあると思います。
しかし、法律で義務づけられた事項ではないので、絶対に聞いたらダメというわけではありません。
面接での会話の中で、出身地や家族の話をしたり、通勤や在宅勤務のために住宅・生活環境について確認することは、普通に考えられますよね。
人となりを知るために、尊敬する人物や思想、愛読書の話をすることもあると思います。
ただ、業務に関係がない(採用の基準になり得ない)のに「尊敬する人物について作文を書きなさい」といった課題を与えるのは、あまり意味のないことだと思います。
よって、「B プライベートのこと」や「C 家族のこと」は、業務に必要だったり会社として配慮が必要なことを知るために聞くことは構いません。
ただ、応募者が答えることを強要されていると感じないよう、「もし差し支えがあれば、お答えいただかなくても大丈夫ですよ」と前置きすると、なおよいでしょう。
例外:とくに機微な情報

「原則は何を聞いてもいい」と言いましたが、例外はなんでしょうか。
それは、「病歴」です。
裁判例では、応募者の同意なく行われたHIV抗体検査やB型肝炎ウイルス感染検査は、プライバシー権の侵害だとして違法だと判断されています。(HIV抗体検査事件 東京地裁 平15.5.28、B金融公庫事件 東京地裁 平15.6.20)
業務によっては、過去に病気になった経緯があると、健康被害のリスクが高まるといったこともあるかと思います。
そうした場合は、必ず、応募者本人の同意を得た上で病歴を把握するようにしてください。
まとめ
Q面接の場では、応募者に何を聞いてもいいのですか?
A原則、何を聞いてもいいのですが、採用の自由には、公共の福祉や人権・労働者保護という制約があることに注意してください。特に、業務上病歴を把握する必要があるときには、必ず応募者本人の同意をとってから行ってください。