メカラウロコでした。
「エロティック・キャピタル」という概念を知ったときのことです。
・・・そうだよね!!!
「ずっとモヤモヤしていたんだ」ということに、この概念を知ってから気がついたのです。
若さや見た目の良さを、自分で活用するのではなく、他人に「ああでもないこうでもない」と評価されることについてモヤモヤしていたんだなあ、ということに。
エロティック・キャピタルは、日本語でいうならば「性的資産」です。
性的魅力は資産であり、自分自身がコントロールできるものだと、考えたことがあったでしょうか。
私は、ありませんでした。
なので、性的魅力は自分の資産であるということを知ったときに、目から鱗が落ちたのです。
私は、女性は自分のエロティック・キャピタルを自分自身のものにできているのか、これほど価値のあるものを自分でコントロールできているのだろうか、ということを考えたいのです。
エロティック・キャピタルとは
性的魅力は資産だ

エコノミック・キャピタルやカルチャー・キャピタル、ソーシャル・キャピタルという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
キャピタルとは、資産や資本という意味です。
それぞれ、経済的資産、文化的資産、社会的資産と訳されます。
いろいろな定義があるのですがそれぞれ、お金や不動産、学歴や技能、社会的な繋がりや人脈のことを指します。
働いたりお金を稼いだり、生きていく上で、私たちはこれらの資産を活用しています。
これらと同じ意味で、美しさ、性的魅力、自己演出力、社交スキルなどを総称した概念が「エロティック・キャピタル」です。
資産や資本は、もちろん、社会みんなのものという考えもあります。
でも、まずは、誰よりもその人自身に価値が還元されるべきものだと思います。
だから、自分自身で自分のエロティック・キャピタルをコントロールするべきだと思うのです。
エロティック・キャピタルの具体例

エロティック・キャピタルとは、「美しさ、セックスアピール、快活さ、着こなしのセンス、人をひきつける魅力、社交スキル、性的魅力などが組み合わさった、外見の魅力と対人的な魅力を総合したもの」とされています。
これらの組み合わせが、その資産の重要性にどう影響するかは、時代や文化によって変化すると考えられています。
たとえば、日本の芸妓やホステスは、セックスアピールだけではなく芸術的素養や接客の立ち回りや気配りなどの賢さが求められます。
一方西インド諸島では、多産であることが女性のセックスアピールとして欠かせず、結婚前に女性が妊娠して健康な子を産むのはめずらしくないそうです。
また、エロティック・キャピタルは持って生まれたものもありますが、訓練して学ぶことができるものと考えられています。
美しさは努力で手に入れたり、整形したり身だしなみを整えたりとお金で買うことができます。
社交スキルも、訓練したり経験を積んだりして身につけることができます。
エロティック・キャピタルは時代や文化によって変化するものであり、自分の仕事や生活に合わせて戦略的にコントロールできるものです。
性的資産を活用することへの嫌悪
搾取される性的資産

一般的に、女性は若いほど大衆から見たときの価値は高まります。
そのことを、よく分かっている方もいれば、分かっていない方もいます。
分かっている方は、それを商品として、値段をつけ、売ろうとします。
若い女性が、自分自身で性的魅力に値段をつけて自分で売るケースは、あまり見たことがありません。
必ず、誰かほかの人がそれに値段をつけて商品として売るわけです。
商品にされる側よりも、商品にする側の方が強いのです。
商品にして売る側が、その性的資産の価値をより享受することになります。
こうして、若い女性のエロティック・キャピタルは搾取される構図となります。
嫌悪感を抱くことは罠だ

エロティック・キャピタルを自分の売りにすることに、嫌悪感を抱いたことがない人がいるでしょうか。
「性的資産は搾取されるものだ」という構図をよく目にするため、反射的に嫌悪感を抱いてしまいます。
あるいは、「貞操観念は大事だ」とか「女性はつつましやかにするべきだ」といった考えを植えつけられているのかもしれません。
この嫌悪感は、「お金を稼ぐことは悪だ」という考え方とも結びついていると思います。
性風俗産業に従事する女性は、その他の産業に従事する女性よりも稼げるケースが多々あります。
「こうした産業は不純だ」と、一般的に言われています。でも、それを誰が決めたかわかりません。
実際に、経済的資産、文化的資産、社会的資産を活用した方が豊かに暮らせるのと同じで、性的資産も活用した方が稼げるのです。
他人の性的資産を商品化して売ったり、それを消費したりする者にとって、「性的資産を売りにするのは愚かだ」という社会の方がそれを安く買い叩けるために都合がいいだけです。
エロティック・キャピタルを自分で活用することに嫌悪感を抱くのは、こうした人たちの罠です。
この性的資産を活用することは、当然のこととして捉えるべきことなのです。
搾取されるのではなく資産を活用する
性的資産の活用は個人の自由である

アイドルや芸能人でなくても、エロティック・キャピタルを活用する場面は多々あります。
男性は、身長が高いほど年収が上がるという研究結果があるそうです。
政治家も、ほとんど顔で選ばれるといっても過言ではありません。
女性は、見た目がよいほど就職活動が有利などといわれます。
残念ながら、同じ成果でも美人と不美人なら、美人の方が高く評価されるという研究結果もあるそうです。
また、自分の見た目のよさを活用したキャバクラ嬢など性風俗産業に従事する方は、女性の平均年収よりよっぽど稼いでいるでしょう。
性的魅力に加えて、自分の性的魅力は価値が高いことを理解して、それを商品として一番高く売れる方法で稼いでいるという賢さに対して、たくさんのお金を支払う方がいるということなのだと思います。
また、パートナー間や夫婦間でもエロティック・キャピタルは重要です。
パートナーや夫婦間で性的関心の不均衡が生じたとき。
どちらかの性的魅力(通常、魅力の高い方)は、駆け引きの材料になります。
性的魅力の低い方が駆け引きをしようとしても、何の結果も生まれません。
浮気するなり不倫するなり、しなくても関係は破綻に近づきます。
このように、性的資産は自分の生活にかなりの影響を与えます。
利益をもたらすこの資産を、自分の人生に活用しない手はありません。
目の敵にするのはやめよう

ひるがえって、職場でエロティック・キャピタルが問題となるのはどんな場面でしょう?
たとえば、セクハラを受けたとき。
あなたの性的魅力を搾取しようとしてくる人がいます。
典型的なセクハラ行為をしてくる人もいますし、「女は愛嬌だ」とか「女性に入れてもらったお茶の方が美味しい」とか評価してくる人もいます。
セクハラ行為を受けたとしても、「自分が気を持たせるようなことをしたのだろうか」と悩む必要はありません。
性的資産は自分自身のものであり、コントロールしていいものだということを認識して、セクハラ行為を会社に訴えるか、会社が何もしてくれなければさっさと見切りをつけましょう。
また、たとえば性的魅力が高い女性が職場に現れ、男性からチヤホヤされていたとき。
あなたのやるべきことは、その女性に嫉妬して嫌がらせをすることではありません。
パワハラの典型例のひとつが、いわゆるお局的な立ち位置の女性が、若い女性従業員に嫌がらせをするということです。
性的魅力に価値があることは確かなのです。まずはそれを認めましょう。
仮にその女性が、若さだけが取り柄で、その若さがなくなっていったときに困るのはその女性であって、お節介をするのはあなたの役割ではありません。
あるいは、あなたはその女性を教育するよう会社から命じられているのなら、その役割を果たしてください。
やるべきことは、性的資産の高い人を目の敵にしてパワハラをするのではなく、自分の生活、仕事、人生のためにエロティック・キャピタルを含めた自分の資産活用に集中することなのだと思います。
まとめ
- 美しさや性的魅力の総称を「エロティック・キャピタル(性的資産)」という。これは自分の資産になる。
- 性的魅力を活用することに嫌悪感を抱くことが多いが、これは性的魅力を商品として売る側の罠である。エロティック・キャピタルの価値は、誰より自分が享受すべきである。
- 性的魅力が高いためにセクハラを受けたとしても、自分を責めないで欲しい。搾取したり消費しようとしてくる人はそこら中にいる。環境が改善されなければさっさと逃げるべき。
- 職場でチヤホヤされている若い女性を見て嫉妬したとしても、やるべきことは嫌がらせではない。教育係ならその役割を果たすべきだし、何より自分の資産活用に集中するべきだ。
- キャサリン・ハキム『エロティック・キャピタル すべてが手に入る自分磨き』(2012)共同通信社