【パワハラ法施行】何はともあれ、法律の枠組みを知ってほしい

ハラスメント防止法
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2020年6月1日、「パワハラ防止法が施行された」なんていわれています。

パワハラ・セクハラをしない、そしてパワハラ・セクハラから自分を守るためにも、今回は、パワハラ防止法を含めた「ハラスメント防止法」がどのように私たちを守ってくれるのかをみていきましょう。

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法律はどのように私たちを守ってくれるのか

労働基準法とのちがい

会社と労働者との契約関係について定めた法律のうち、一番ポピュラーなのは、労働基準法です。

労働基準法の位置づけは、人と人との契約について定めた民法の「特別法」です。

会社と労働者との労働契約については、最初に、労働基準法が適用されます。

そして、労働基準法に決まりがないことは、人と人との契約に関する取り決めに立ち返って、民法が適用されるという順番になります。

労働基準法の特徴は、これを守らないと、「勝手に労働基準法の内容に修正される」ということです。

例えば、どんなに「うちには年次有給休暇はない!」といっても、労働者には勝手に年次有給休暇が与えられることになりますし、どんなに「うちでは残業代は出ない!」といっても、「働かせた時間には割増賃金を支払え」ということになります。

また、労働基準法のもう一つの特徴は、刑事罰をもってこれを会社に守らせるということです。

労働基準監督署が会社の労働基準法違反を発見したら、まずは是正勧告がなされ、「ここが法違反だから直してね」といわれます。

是正勧告を放置したり、「法違反ではない!」などと主張したりすると、悪質だとされて罰金を払わされたり、送検されることになります。

ハラスメント防止法の特徴は?

パワハラ、セクハラ、マタハラは、以下の法律に定められています。ここでは、これらを合わせて「ハラスメント防止法」と呼ぶことにします。

  • パワハラ:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(「労働施策総合推進法」)
  • セクハラ:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(「男女雇用機会均等法」)
  • マタハラ:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律と育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(「男女雇用機会均等法」と「育児介護休業法」)

ハラスメント防止法は、労働基準法とは異なり、「勝手にハラスメントのない状態に修正される」ことはありませんし、刑事罰をもって法律を守らせるという性質のものでもありません。

なぜなら、労働基準法の決まりごとは、例えば、8割出勤したら10日年次有給休暇を与えろとか、週40時間以上働かせたら割増賃金を支払えというように、基準が数字で定められ、それを守っているかどうかが明らかなのに対し、ハラスメントにおいては、とある言動がハラスメントに該当するかどうかは、裁判をしても意見が分かれることがあり、明確な線引きはできないからです。

残念ながら、「これがハラスメントか否か」が明確に定義できない以上、労働者がハラスメントをされたら会社が罰せられると決めることはできない、ということになってしまいます。

「会社がやらなければならないこと」が決められている

したがって、ハラスメント防止法では、「労働者にハラスメントをしてはいけない!」と決められているのではなく、ハラスメントはどういうものかをざっくりと定義した上で、国が会社に対して、「ハラスメントのない職場環境のために、ハラスメント防止措置を行ってくださいね」というお願い事が決められているのです。

具体的には、会社は、主に以下の3つを行うよう求められています。

  1. ハラスメントを行ってはならないという会社の方針を明らかにして、それを周知・啓発すること
  2. ハラスメントに関する相談や苦情に適切に対応するための体制を整えること
  3. ハラスメント問題が発生したら、速やかに適切に対応すること

これらの防止措置がなされていない場合には、労働基準監督署ではなく、その上部組織である都道府県労働局が対応します。

労働基準監督署は、主に労働基準法違反の有無を判断して指導するところであって、ハラスメントがあるか否か、会社が防止措置を行っているかどうかを判断するところではないからです。

都道府県労働局は、会社がハラスメント防止措置を行っていない場合、現状に関して報告を求めたり、助言や指導、勧告を行います。誠実に対応しなければ、悪質だとされて企業名公表されます。

刑事罰により労働基準法を守らせることとは異なり、ハラスメント防止法における行政罰により、会社の社会的な評価が下がることになるのです。

解決に向けて法律はどう当てはめられるの?

裁判以外の第三者による解決

では、ハラスメントの加害者やその環境を放置した会社を、誰も捕まえてくれないのなら、どうすればよいのでしょうか?

まず、裁判まではいかなくても、裁判以外で第三者が入って解決を目指す方法があります。

例えば、ハラスメント防止法に基づく、都道府県労働局による「調停」という制度があります。

調停委員が調停案を作成し、労使双方がそれを受け入れるかどうかを決めます。

調停は裁判ではありませんので、法律に基づいて判断が下されるというよりは、いくらで和解するかという話し合いになります。

ただし、これは、国から会社へのお願い事を取り決めているハラスメント防止法に基づく制度ですので、ハラスメントの加害者を相手にすることはできません。

裁判では民法が適用される

ハラスメントの加害者に対しても訴えたい場合には、裁判をすることになります。

自分の受けた言動が、慰謝料を支払ってもらえるほどのレベルかどうかは、パワハラ防止法や、もちろん労働基準法にも定めはありませんので、民法に立ち返って判断されることになります。

加害者の言動が不法行為である(民法第709条)、会社が自社の労働者が加害者になったことに責任がある(民法第715条)、あるいは、会社が労働者が健康で安全に働くことができる環境を整えていなかったことに責任がある(民法第415条)と、加害者や会社に対し、慰謝料や逸失利益(被害者が働けなくなった期間の賃金に相当する金額)を支払えという判断が下されます。

いざというときのために

ハラスメントの被害を受けたら

調停や裁判を行うにしても、先輩、上司や会社に相談するにしても、誰かに説明する過程は欠かせませんので、いつどこでどんなことをされたのか、記録しておくことはなんとかやってみましょう。

このメモがあれば、いざというときには裁判という最終手段も取れますし、客観的に状況を判断する材料にもなりますので、さっさと会社に見切りをつけるのか、その他の被害者を生まないためにも、会社や公の機関に相談するという行動を起こすのか決めるきっかけにもなります。

私も「パワハラだ!」と感じたときに、日付と何があったかの経緯を記録したことがありますが、何かのときカードとしてきれますし、そのメモがお守りのような役割もはたしてくれていると感じました。

被害の内容によっては、他人に話しにくいこともあると思いますが、どこでどんなことをされたのか説明できなければ、愚痴で終わってしまい、誰も助けることができません。

走り書きでも、記号でもいいので、「状況を変えたい」と思ったときに第三者に説明できる状態にしておくことは大切です。

加害者にならないために

ハラスメント防止法で直接罰せられることはなくても、裁判で争いになってしまったら、数百万、高ければ数千万の慰謝料を命じられることもあります。

そこまでのケースはまれでも、周囲からの信頼を失ったり、会社でハラスメントと認定されれば、懲戒処分を受けたり、異動させられたり、退職せざるを得なくなる可能性はあります。

ハラスメント的な言動は、自分の思い込みや自分流の関わり方から生まれます。

まずは、どんな言動がパワハラやセクハラに該当しうるのか、ざっくりと目を通しておきましょう。

そして、男女の違いや人間の特性を知って客観視することで、自分がなぜそのような言動をとってしまうのか、どのように気をつけて対策していけばよいかを一緒に考えていきましょう。

まとめ

  • ハラスメント防止法に、「ハラスメントとは何か」が定義されているが、ある言動がこの定義に当てはまるかどうか白黒つけるのは難しい。
  • ハラスメント防止法は、会社に防止措置を義務付け、違反したら行政罰により社会的評価を下げるという内容。
  • ハラスメント事案が起きたとしても、ハラスメント防止法により会社や加害者が直接罰せられることはない。
  • 裁判では、ハラスメント防止法ではなく、民法が適用される。
  • 被害を受けたらメモを取っておくこと、加害者にならないためには思い込みや自分流を見直すことが大切。

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