会社がある程度の大きさになると作成する「就業規則」
なんとなく会社に設置されている「就業規則」
労基法で作成が義務づけられているが、なんのためかよく分からない「就業規則」
今回は、就業規則とは何か、なんのために作成しなければならないかをお伝えします。
就業規則は「防災グッズ」
就業規則には、難しいしめんどくさいっていうイメージがあります
法律の改正もあって年々文量が増えていくし管理も大変ですよね
なんのために作らなきゃいけないのかを教えてください!
揉めごとに対応するために備えておくのが就業規則です
「就業規則」は、なんのために作成しなければならないのでしょうか?
就業規則には、主に従業員の労働条件を記載していきます。
でも、はっきり言って文量は多いし管理も面倒、読んでも日本語がよく分からない文章、ともいえると思います。
就業規則がなくても日頃の業務は進んでいきますし、特に問題になったこともないという方も多いと思います。
就業規則の重要性がいまいちよく分からないのは、就業規則は「防災グッズ」だからです。
つまり、「いつ使いどきがくるか分からないけれど、いつかは必要になるもの」ということです。
「いつか」というのは、会社と従業員が揉めたときです。
揉めたいと思って採用されたり、働く会社を決めたりする人はいないでしょうが、人と人なのでトラブルになってしまうことがあるのは仕方ありません。
会社としていくら従業員に誠意を尽くしても、何かの拍子に発生してしまう揉めごと。これに対応するためのグッズが「就業規則」です。
「何か起きてもきっと私は大丈夫」
「この間も対処できたし次も問題ないでしょ」
と思ってしまう気持ちも分かりますが、
備えあれば憂いなし
のために作成しておくものが、就業規則なのです。
「防災グッズ」のように出番がいつかは分からないが、何かの拍子に起こる揉めごとに対応するために就業規則を備えておきましょう
常時10人以上従業員のいる会社が就業規則を作成する
就業規則は、いざというときのために備えておくものなんですね
どうしてもトラブルは起きてしまうものですからね
ところで就業規則は誰が作るものなのですか?
従業員が常に10人以上いる会社に作成義務があります
就業規則は、常時10人以上の従業員を使用している会社が作成し、労働基準監督署に届け出なければならないとされています。(労働基準法第89条1項)
ここでいう「会社」は、厳密にいうと「事業場」のことを指します。事業場とは、場所的に独立した一つの営業所といったイメージです。
会社全体で15人の従業員がいたとしても、東京本社に8人、大阪営業所に7人であれば、法的には就業規則を作成する義務はないことになります。
「常時10人以上」とは、常態として10人以上の従業員を使用するということです。
雇用形態は問われません。正社員だけでなく契約社員、パートタイマー、アルバイトも含まれます。
ただし、就業規則に記載する労働条件は、雇用形態によって異なると思います。
そのため、就業規則も雇用形態別に作成された方がいいです。
そうすると、正社員が6人、パートタイマーが3人、契約社員が1人の事業場では、3パターンの就業規則を作成しておくのがベストということになりますね。
作成した就業規則は、事業場ごとに管轄の労働基準監督署に届け出ます。
管轄の労働基準監督署の場所は、厚生労働省のホームページで検索できます。
常時10人以上の従業員を使用している会社(事業場)は就業規則を作成しなければなりません
就業規則には服務規律と懲戒を書く!
従業員が10人以上いる会社が就業規則を作らなきゃいけないんですね
会社の規模を大きくしようと思っているなら、早めに着手するのもありですね
就業規則に書く労働条件って、具体的にどんなものなのですか?
たくさんあるのですが、トラブル対応に大切なのは服務規律と懲戒です
就業規則に記載しなければならないのは、具体的には以下の事項です。(労働基準法第89条2項)
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期、昇給に関する事項(ここでいう「賃金」は、臨時の賃金等を除く)
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
- 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、退職手当の支払いの時期に関する事項
- 臨時の賃金等(退職手当を除く)・最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
- 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
- 安全・衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 災害補償・業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 表彰・制裁の定めをする場合においては、その種類・程度に関する事項
- 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
このようにたくさんありますので、市販のひな型を見比べて使ってみたり専門家に相談するのが一番早いとは思います。
就業規則には、雇用形態別に労働条件を整理して記載していくというのが基本的な流れです。
ですが、就業規則は「防災グッズ」なので、日頃業務を行なっていて参照することはほとんどないと思います。
何かの拍子に起きたトラブルに対応するために重要なのは、服務規律と懲戒(制裁)です。
会社を運営していれば、不正を働いたりハラスメントをしたりという、悪いことや問題を起こした従業員を、罰しなければいけない場面が生じます。
ただし、会社と従業員が労働契約を結んだからといって、当然に会社が従業員を罰する権利を持てるわけではありません。
問題を起こした従業員に対して、いざというときに懲戒処分をするには、あらかじめ「服務規律は〇〇で、〇〇に違反したから懲戒処分を科す」というルールを作っておかなくてはならないのです。
例えば、「当社の従業員は職場でパワハラを行ってはならない。パワハラを行ったと会社が認めた場合には、その従業員に懲戒処分を科す」といったルールを、就業規則に記載しておきます。
服務規律は上記の11、懲戒(制裁)は10に当たります。
後ろの方にありますが、トラブル対応の観点からは非常に重要な2つです。
就業規則には基本的に労働条件を記載するが、トラブル対応に大事なのは服務規律と懲戒です
就業規則の3つの作り方
就業規則がトラブル対応のために大切なのはなんとなく分かったけど、どうやって作ればいいのですか?
作り方は、ひな型を購入する、本やセミナーを参考にする、専門家に依頼するの3つです
その方法はどうやって選べばよいですか?
会社の規模や体制によって変わると考えます
就業規則は、自社の労働条件を整理して記載し、服務規律と懲戒のルールを整備して作成します。
厚生労働省がモデル就業規則のひな型を公開していたり、今では本屋さんやオンライン教材で就業規則のひな型を手に入れることができます。
ひな型を手に入れたら、本やセミナーで勉強しながら自社で作成するのもありです。
あるいは、就業規則を作成する専門家(労働法専門の弁護士や就業規則作成の実績がある社会保険労務士)に依頼するのもありです。
どの方法を優先するかは、自社の規模や体制によって異なると思います。
例えば、規模が小さかったとしても、文書を読んだり労務管理について勉強できるタイプの方がいらっしゃれば、自社で作成してもいいと思います。
そういう方がいらっしゃらなければ、専門家に依頼するのが早いと思います。
規模が大きい会社にも、同じことがいえるでしょう。
大きい会社でも人事周りの人材が不足しているとか、または法務を強化したいのであれば、やはり専門家に依頼されるとよいと思います。
自社である程度の知識を持っておくことは必須ですが、「餅は餅屋」だとも思います!
労働条件を整理して、服務規律と懲戒を整備して作成する。作成方法は、ひな型を購入する、本やセミナーで学ぶ、専門家に依頼するの3つです
就業規則の簡単な解説まとめ
- 就業規則は「防災グッズ」のように出番がいつくるか分からないが、トラブル対応のために作成しておくもの。
- 常態として10人以上の従業員がいる会社(事業場)が就業規則を作成しなければならない
- 就業規則には、基本的に労働条件を記載する。ただし、トラブル対応のためには服務規律と懲戒のルールが大事。
- 作成方法は、ひな型を購入する、本やセミナーで学ぶ、専門家に依頼するの3つ。