答えは次のうちどれでしょう?
A 入社前でもお給料を支払わないといけない
B 参加を強制できる
C 参加者を選別できる
D パートなどいわゆる「非正規社員」にも参加させなければならない
E 短期で退職しても全額返還させられない
正解は・・・A〜Eのすべてが、ある意味で正解ですが、金銭問題なので「A 入社前でもお給料を支払わないといけない」と「E 短期で退職しても全額返還させられない」が重要です!
以下に、考え方のポイントをご紹介します。
目次 非表示
労働時間=お給料を支払う

教育訓練や研修を受けさせた時間に対して、お給料を支払わなければならないかどうかは、正式に入社させるイベントを行ったかどうかは関係ありません。
または、書面で労働契約書を交わしたかどうかも関係ありません。
入社予定の人を含む従業員に対し、会社が指揮命令をして教育訓練や研修を受けさせた時間には、お給料を支払わなければならないのです。
つまり、会社が従業員を指揮命令下に置いている時間には、賃金支払い義務が生じるのです。
賃金支払い義務のある「指揮命令下に置いている時間」を、一般的に「労働時間」といいます。
教育訓練や研修の時間が「労働時間」かどうかは、「参加を強制しているかどうか」がひとつの基準になります。
「強制参加です」と明言していなくても、たとえば参加しなければ内定を取り消すとか、参加しなければ評価やお給料が下がるという対応をしていれば、それは参加を強制しているのと同じです。
したがって、教育訓練や研修の「B 参加を強制できる」のは確かですが、参加を強制して指揮命令下に置いた時間ならば「A 入社前でもお給料を支払わないといけない」のです。
戦略は自由

従業員にどのような訓練や研修を受けさせ、どのように教育するかは、会社に委ねられています。
教育戦略は自由なのです。
会社は、目的を持って、コストをかけて教育訓練や研修を実施するわけですから、「C 参加者を選別する」こともできます。
いわゆる「管理職研修」がイメージしやすいかと思います。
ただし、選別するには合理的な理由が必要です。
当たり前ですが「嫌いだから」「(なんとなく)能力が低いと思っているから」といった理由で、業務上必要な教育訓練を受けさせないことはできません。
または、「パートタイマーだから」という理由のみで、業務上必要な教育訓練を受けさせないということもできません。
とくに、いわゆる「正社員」と同じ職務内容(業務の内容と責任の程度)を行っているパートタイマーや有期雇用の従業員には、職務の遂行に必要な研修として正社員に受けさせているものと同じ研修を実施しなければなりません。(パートタイム・有期雇用労働法第11条1項)
費用の返還は困難

ときどき「入社して◯ヶ月以内に退職したら研修費用を返還すること」といった取り決めをしているケースがありますが、これは違法と判断される可能性が高いです。
労働基準法には「賠償予定の禁止」というルールがあり、労働契約に付随して金銭を返還する約束を取り付けることはできないからです。
業務上必要な研修に関しては、返還請求が認められないと考えてよいと思います。
返還請求が認められる可能性があるのは、教育訓練や研修の内容が「業務に関連がなく従業員が個人的に利益を享受するもの」であるときです。
その場合でも、費用の返還について事前に取り決めをしておくことが重要です。
まとめ
Q教育訓練や研修はどう運用すればいいですか?
A会社の指揮命令下に置き、参加を強制して訓練や研修を受けさせた時間に対しては、賃金支払い義務が生じます。参加者を選別することはできますが、合理的な理由が必要です。業務上必要な訓練・研修の費用を返還させることは困難です。