社労士のシモデ(@sr_shmd)です。
「性的資産」という概念をご存知でしょうか。
英語では「エロティック・キャピタル」といいます。
性的魅力の資産という意味です。
時おり
そんな服装をしてはしたない!
ですとか
性風俗産業に従事する女性はみっともない!
などと、女性の容姿とともに批判する方がいます。
しかしながら、性的魅力は個人の資産であり、活用の仕方は個人に委ねられているものだと考えます。
今回は、性的資産の活用と性的資産に関わるハラスメントについて考えてみたいと思います。
この記事は次のような人にオススメです!
- ハラスメント被害に困っている人
- なぜハラスメント問題が起こるのか知りたい人
- ハラスメントをしないように気をつけたい人
性的資産は身につけて活用できるもの
エロティック・キャピタル(性的資産)とは
エコノミック・キャピタルやカルチャー・キャピタル、ソーシャル・キャピタルという言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
キャピタルとは、資産や資本という意味です。
それぞれ、経済的資産、文化的資産、社会的資産と訳されます。
いろいろな定義があるのですがそれぞれ、お金や不動産、学歴や技能、社会的な繋がりや人脈のことを指します。
働いたりお金を稼いだりと、生きていく上で私たちはこれらの資産を活用しています。
これらと同じ意味で、美しさ、性的魅力、自己演出力、社交スキルなどを総称した概念がエロティック・キャピタルです。
エロティック・キャピタルの特徴
エロティック・キャピタルとは、以下の要素が組み合わさった外見の魅力と対人的な魅力を総合したものです。
- 美しさ
- セックスアピール
- 快活さ
- 着こなしのセンス
- 人をひきつける魅力
- 社交スキル
- 性的魅力 など
エロティックキャピタルの特徴として、以下の2点が挙げられています。
- エロティック・キャピタルの要素が資産の重要性にどう影響するかは、時代や文化によって変化する
- 持って生まれたものもあるが、訓練して学ぶことができるものでもある
1の具体例として、たとえば、日本の芸妓やホステスはセックスアピールだけではなく芸術的素養や接客の立ち回りや気配りなどの賢さが求められます。
一方西インド諸島では、多産であることが女性のセックスアピールとして欠かせず、結婚前に女性が妊娠して健康な子を産むのはめずらしくないそうです。
2については、美しさは努力で手に入れたり、整形したり身だしなみを整えたりと、お金で買うことができます。
社交スキルも、訓練したり経験を積んだりして身につけることが可能です。
エロティック・キャピタルで重視される要素は時代や文化によって変わり、また、訓練によって身につけられるものです
性的資産も経済的資産や文化的資産と同じ
性的資産の活用で年収アップ!?
エロティック・キャピタル(以下、「性的資産」)を売りにしている職業といえば、アイドルや芸能人が思い浮かぶかもしれません。
しかし、普通の一般人でも性的資産が活かされる場面は多々あります。
例えば、さまざまな研究によって、外見の魅力が以下のような差を生むと言われています。
- 政治家が選挙で選ばれるかどうかに見た目が影響する
- 男性は身長が高いほど年収が上がる
- 女性は外見が良いほど就職活動が有利になる
- 同じ成果でも、美人と不美人なら美人の方が高く評価される
- 性風俗産業に従事する女性の平均年収は、全体の平均より大幅に高い
つまり、性的資産を活用した方が年収が上がる可能性があると考えられます。
性的資産を活用することは個人の自由
性的な資産価値が高い方が稼げるなんて理不尽だ!
女性は貞操観念を持ってつつましやかにするべきでしょ!
このように思う方もいらっしゃるかもしれません。
若い女性を商品として売るのはお金儲けを目的とした大人たちなので、「性的資産を活用する」というと反射的に嫌悪感を抱いてしまうのはとてもよく分かります。
あるいは、「お金を稼ぐことは悪だ」という価値観が植え付けられていて、性風俗産業に従事する女性が他の女性よりも多く稼げることに対して嫌悪感を抱くのかもしれません。
しかしながら、個人の経済的資産や文化的資産、社会的資産を活用することは当たり前なのに、なぜ性的資産を活用することだけがダメなのでしょうか。
確かにアイドル界や性風俗産業界では、若い女性の性的資産が大人たちによって搾取される構造にあるため、それを悪とみなすのは納得できます。
ただ、悪い人たちが狙うのは性的資産に限ったことではなく、経済的資産や文化的資産、社会的資産も標的になっているのです。
性的資産を各々が活用して稼いで生きていくことは他人に評価されることではなく、個人の自由だと考えます
性的資産とハラスメント
職場で性的資産にまつわるハラスメントが問題になるときは、以下の2つの場面だと思います。
- 性的資産を標的としたセクハラ
- 性的資産への嫉妬からくるパワハラ
性的資産を標的としたセクハラ
現代の日本社会では、若い女性は若いというだけで価値が高いため、職場ではセクハラにあってしまう可能性が高いです。
典型的なセクハラ行為をする人もいるでしょうし、「女は愛嬌だ」とか「女性に入れてもらったお茶の方が美味しい」とか評価してくる人もいるでしょう。
性的な資産価値が高いことはメリットもあれば、このようにセクハラをされやすいというデメリットもあります。
性的言動は業務にはまったく関係がないにも関わらずセクハラをしてくる人が悪いのであって、セクハラをされたとしても「自分が気を持たせるようなことをしたのだろうか」「自分の言動が悪かったのだろうか」と責める必要はありません。
性的資産への嫉妬からくるパワハラ
また、たとえば性的な資産価値が高い女性が職場にいる場合、男性たちがチヤホヤすることがあると思います。
もちろん会社では全員が協力しあって成果をあげるべきで、外見で対応が変わることに納得できない方もいるかもしれません。
そのため、チヤホヤされている女性を嫉妬していじめや嫌がらせをするなどのパワハラ問題が生じることがあるでしょう。
しかし、個々人が持つ資産に対して人々の対応が一定程度変わることは、致し方のないことです。
仮にチヤホヤされている女性の取り柄が若さだけで、その若さがなくなったときに困るのはその女性であって、性的資産の活用の仕方に周囲がとやかく言うことではないと思います。
ハラスメント問題には適切に対応しなければならない
ただし、もし会社でのハラスメント問題に対処しなければならない立場なのでしたら、「仕方ない」ではなく問題の解決に取り組まなくてはなりません。
会社はハラスメントを防止するために、従業員から相談を受けた場合は適切に対応する義務があります。
被害を訴えた従業員や行為者、周囲の者から聞き取り調査をするなどしてハラスメントの有無を判断し、必要に応じて行為者を処分することが必要です。
一方、ハラスメントを受けて困っている方は、まず社内で相談相手を見つけることが基本的な対応だと考えます。
ただし、社内で相談相手を見つけることはハードルが高いと感じることもあるでしょう。
その場合は利害関係のない第三者にまずは相談してみるのも一つです。
直接あなたを救うことはできなくても、一緒にお気持ちを整理してどのような第一歩を踏み出すかを考えます。
セクハラ・パワハラの解決方法を一緒に考えます 現状とお気持ちを整理して、第一歩を踏み出すお手伝いをしますハラスメント問題への対応のポイントについては、以下の記事も参考にしてください。
性的資産にまつわるハラスメントの問題点まとめ
- 美しさや性的魅力を総称した概念である「エロティック・キャピタル(性的資産)」は、経済的資産や文化的資産と同様にさまざまな場面で活用され得る
- 性的な資産価値が高い方は職場でセクハラやパワハラにあいやすいかもしれないが、「自分に原因があるのでは」と自分を責める必要はない
- ハラスメント問題を担当している方は「仕方ない」ではなく適切に対応することが求められる
<参考資料>
- キャサリン・ハキム『エロティック・キャピタル すべてが手に入る自分磨き』(2012)共同通信社