女性社労士シモデのナッジブログhttps://nudge.blog人事労務の基礎知識やハラスメント問題の対処法Thu, 11 May 2023 16:52:35 +0000jahourly1【FAQ】新入社員に対して入社時に伝えるべきことhttps://nudge.blog/faq-nyushajisetsumei/Wed, 13 Oct 2021 03:04:54 +0000https://nudge.blog/?p=1741

社労士のシモデ(@sr_shmd)です。 突然ですが人事労務に関するクイズです。 正解は・・・(1)〜(5)のすべてが正解です! この記事では、新入社員に対して入社時に伝えるべきことについて解説します。 目次 非表示 就 ... ]]>

社労士のシモデ(@sr_shmd)です。

突然ですが人事労務に関するクイズです。

従業員が入社したときには何を伝えておかなければならないのでしょうか?
答えは次のうちどれでしょう?
(1) 就業規則の掲示場所
(2) ハラスメント相談の担当者
(3) 雇用管理に関する相談の担当者
(4) 正社員と非正規社員の待遇差について
(5) 健康診断の受診時期

正解は・・・(1)〜(5)のすべてが正解です!

この記事では、新入社員に対して入社時に伝えるべきことについて解説します。

シモデ
シモデ

この記事は次のような人にオススメです!

  • 就業規則を担当している人事労務担当者
  • 新入社員の教育係
  • 社労士試験の受験生

就業規則の掲示場所を伝える

常時10人以上の従業員が働いている事業場では、就業規則を作成する義務があります。(労働基準法第89条1項)

就業規則には主に職場の労働条件を記載しますが、単に作成しただけでは効力は生じません。

従業員に周知してはじめて、就業規則の内容が職場の労働条件として機能します

周知方法としては、いつでも見られる状況であれば職場に置いておいてもよいですし、紙で渡す方法やオンライン上に掲示する方法があります。

新しく従業員が入社したときには、「(1) 就業規則の掲示場所」を知らせるようにしましょう。

相談窓口の担当者を伝える

セクハラ、マタハラ、パワハラなどのハラスメントについては、相談窓口の設置が義務づけられています(大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から義務化)。

ハラスメント相談窓口は、社内に担当者や担当部署を設けてもよいですし、業務委託のサービスを利用するなど、社外に設けても構いません。

「誰に連絡すれば、ハラスメントについて相談できるか」を明らかにしておくことが必要です。

また、パートタイマーや契約社員など有期雇用で働く方に対しては、労働条件などについて相談できる窓口を設けなくてはなりません

こちらは、ハラスメントとは異なり、社内に窓口を設けることが一般的です。

新しく従業員が入社したときには、雇用形態にかかわらず「(2) ハラスメント相談の担当者(部署)」を、パートタイマーと有期雇用の従業員に対しては「(3) 雇用管理に関する相談の担当者(部署)」を伝えるようにしましょう。

正社員と非正規社員の待遇差などについて伝える

パートタイマーや有期雇用の従業員を雇ったときには、「(4) 正社員と非正規社員の待遇差について」などを説明しなければなりません。(パート有期雇用労働法第14条1項)

具体的には、以下の事項についてです。

  • 正社員と非正規社員の待遇について、不合理な差を設けていないこと
  • 正社員と同じような働き方をする非正規社員の待遇について、差別的な取り扱いをしていないこと
  • 正社員と同じような働き方をする非正規社員に対しては、正社員と同様の教育訓練を実施すること
  • 正社員と同様、福利厚生施設を使えること
  • 正社員登用制度について

有期雇用労働者に対しての説明義務は、2020年4月1日(中小企業においては2021年4月1日)から義務化されました。

健康診断の受診時期を伝える

採用の過程で健康診断の結果を提出させていない場合には、従業員が入社してから1ヶ月以内くらいには健康診断を受けさせなければなりません

法律で定められた診断項目については、会社が従業員の健康状況を把握する義務があります。

それと同時に、従業員にも健康診断を受診する義務があります。

新しく従業員が入社したときには、入社時の「E 健康診断の受診時期」を知らせるようにしましょう。

新入社員に対して入社時に伝えるべきことまとめ

従業員の入社時に伝えておくべきことは何ですか?
就業規則の掲示場所、ハラスメント相談の担当者(部署)、パートと有期雇用の従業員に対しては雇用管理に関する相談の担当者(部署)、正社員と非正規社員の待遇差について、健康診断の受診時期について伝えておく必要があります。
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【FAQ】教育訓練・研修制度の正しい運用方法https://nudge.blog/faq-kyouikukunren/Wed, 15 Sep 2021 08:30:00 +0000https://nudge.blog/?p=1727

社労士のシモデ(@sr_shmd)です。 突然ですが人事労務に関するクイズです。 正解は・・・ある意味で(1)〜(5)のすべてが正解ですが、金銭問題になることから「(1) 入社前でもお給料を支払わないといけない」と「(5 ... ]]>

社労士のシモデ(@sr_shmd)です。

突然ですが人事労務に関するクイズです。

教育訓練や研修制度はどのように運用するとよいでしょうか?
答えは次のうちどれでしょう?
(1) 入社前でもお給料を支払わないといけない
(2) 参加を強制できる
(3) 参加者を選別できる
(4) パートなどいわゆる「非正規社員」にも参加させなければならない
(5) 参加者が短期間で退職しても研修費用を全額返還させられない

正解は・・・ある意味で(1)〜(5)のすべてが正解ですが、金銭問題になることから「(1) 入社前でもお給料を支払わないといけない」と「(5) 参加者が短期間で退職しても研修費用を全額返還させられない」が重要です!

この記事では、教育訓練・研修制度の正しい運用方法について解説します。

シモデ
シモデ

この記事は次のような人にオススメです!

  • 教育訓練・研修を担当している人事労務担当者
  • 教育訓練・研修を受ける新入社員
  • 社労士試験の受験生

労働時間には賃金支払い義務がある

教育訓練や研修を受けさせた時間に対して、お給料を支払わなければならないかどうかは、内定式や入社式などのイベントを行ったかどうかに関わりありません。

また、書面で労働契約書を交わしたかどうかも関係ありません。

入社予定の人を含む従業員に対し、会社が指揮命令をして教育訓練や研修を受けさせた時間には、お給料を支払わなければならないのです。

つまり、会社が従業員を指揮命令下に置いている時間には、賃金支払い義務が生じます

賃金支払い義務のある「指揮命令下に置いている時間」を、一般的に「労働時間」といいます。

教育訓練や研修への参加は強制?

教育訓練や研修の時間が「労働時間」かどうかは、「参加を強制しているかどうか」が一つの基準になります

「強制参加です」と明言していなくても、たとえば参加しなければ内定を取り消すとか、参加しなければ評価やお給料が下がるという対応をしていれば、それは参加を強制しているのと同じです。

したがって、教育訓練や研修の「(2) 参加を強制できる」のは確かですが、参加を強制して指揮命令下に置いた時間ならば「(1) 入社前でもお給料を支払わないといけない」のです。

参加者を選別するには合理的な理由が必要

従業員にどのような訓練や研修を受けさせ、どのように教育するかは、会社に委ねられています。

教育戦略は自由なのです。

会社は、目的を持って、コストをかけて教育訓練や研修を実施するわけですから、「(3) 参加者を選別する」こともできます。

いわゆる「管理職研修」がイメージしやすいかと思います。

ただし、参加者を選別するには合理的な理由が必要です。

当たり前ですが「嫌いだから」「(なんとなく)能力が低いと思っているから」といった理由で、業務上必要な教育訓練を受けさせないことはできません。

また、「パートタイマーだから」という理由のみで、業務上必要な教育訓練を受けさせないこともできません

とくに、いわゆる「正社員」と同じ職務内容(業務の内容と責任の程度)を行っているパートタイマーや有期雇用の従業員には、職務の遂行に必要な研修として正社員に受けさせているものと同じ研修を実施しなければなりません。(パートタイム・有期雇用労働法第11条1項)

費用の返還請求は認められないケースが多い

ときどき「入社して◯ヶ月以内に退職したら研修費用を返還すること」といった取り決めをしているケースがありますが、これは違法と判断される可能性が高いです。

労働基準法には「賠償予定の禁止」というルールがあり、労働契約に付随して金銭を返還する約束を取り付けることはできないからです。

業務上必要な研修に関しては返還請求が認められないと考えてよいと思います。

返還請求が認められる可能性があるのは、教育訓練や研修の内容が「業務に関連がなく従業員が個人的に利益を享受するもの」であるときです。

その場合でも、費用の返還について事前に取り決めをしておくことが重要です。

教育訓練・研修制度の正しい運用方法まとめ

教育訓練や研修制度はどのように運用するとよいでしょうか?
会社の指揮命令下に置き、参加を強制して訓練や研修を受けさせた時間に対しては、賃金支払い義務が生じます。参加者を選別することはできますが、合理的な理由が必要です。また、業務上必要な訓練・研修の費用を返還させることは困難です。
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電話番はダメ?労働基準法における休憩時間のルールhttps://nudge.blog/kyukei/Sun, 29 Aug 2021 14:00:00 +0000https://nudge.blog/?p=1668

お昼休憩に食事をする時間が取れていたら、まあいいだろうと思っていませんか? 休憩中には、従業員に業務から完全に解放させなければなりません。 健康管理のためにも、もし休憩時間に仕事をしてしまう従業員がいたら、休むように指示 ... ]]>

お昼休憩に食事をする時間が取れていたら、まあいいだろうと思っていませんか?

休憩中には、従業員に業務から完全に解放させなければなりません。

健康管理のためにも、もし休憩時間に仕事をしてしまう従業員がいたら、休むように指示しなければいけません。

今回は、休憩時間の原則について紹介します。

休憩時間の長さは?

人事労務担当者
人事労務担当者

休憩時間に仕事をしちゃう人がいたら、休むよう指示するのがベストなんですね

シモデ
シモデ

健康問題や賃金の未払い問題に発展しかねないですからね

人事労務担当者
人事労務担当者

1日にどのくらい休憩時間を取らせないといけないのでしょうか?

シモデ
シモデ

6時間超で45分以上、8時間超で60分以上です

1日の労働時間が6時間を超えるときには45分以上、8時間を超えるときには60分以上の休憩時間を取らせなければなりません。

ここでいう「労働時間」とは、会社が従業員に指揮命令している時間になります。

「指揮命令」には、明示だけではなく黙示のものも含まれます。

そのため、休憩時間に仕事をしている従業員を見過ごしていれば、黙示の指揮命令と捉えられ、「その時間に賃金を支払いなさい」という話に発展しかねないのです。

また、たとえば休憩なしで1日5時間半働くパートさんに、1時間残業してもらおうと思ったら、1日の労働時間が6時間半となり6時間を超えるため、45分の休憩を取らせる必要が生じます。

休憩時間を取らせてから1時間残業させるならば、30分の残業で6時間で帰宅させたほうがいいかもしれません。

なお、休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりません。

従業員から「休憩なしで7時間で帰らせてください」と頼まれたとしても、「途中で休憩を取らせる」ことが健康管理上必要なので、応じることはできないのです。

シモデ
シモデ

1日の労働時間が6時間超なら45分以上、8時間超なら60分以上の休憩時間を、労働時間の途中に取らせなければなりません

休憩は一斉付与?

人事労務担当者
人事労務担当者

6時間超で45分、8時間超で60分が原則なんですね

シモデ
シモデ

途中で取らせることも忘れないよう注意ですね

人事労務担当者
人事労務担当者

他に気をつけるところはありますか?

シモデ
シモデ

従業員に一斉に休憩を取らせないといけません

休憩は、一斉に取らせることが原則です。

一斉に取らせる単位は、ひとつの事業場です。

事業場とは、ひとつの場所を指しています。ひとつの支店、営業所、店舗などです。

ただし、労使協定で、一斉に休憩を与えない従業員とその従業員への休憩の与え方を決めることで、一斉付与を適用除外とすることができます。

また、以下の業種は、顧客への対応などで一斉に取得することが難しいため、労使協定を締結しなくても、休憩の一斉付与の原則が除外されています。

  • 運輸交通業
  • 商業
  • 金融広告業
  • 映画・演劇業
  • 通信業
  • 保健衛生業
  • 接客娯楽業
  • 官公署
シモデ
シモデ

休憩は、一つの事業場で一斉に取らせることが原則。一斉に取らせられないなら労使協定を結ぶ必要があります

休憩中の電話番はダメ!

人事労務担当者
人事労務担当者

休憩は一斉に取らせないといけないんですね

シモデ
シモデ

一斉付与ができないなら業種を確認してみてくださいね

人事労務担当者
人事労務担当者

でも電話に出るくらい大したことないのでは・・・

シモデ
シモデ

実際には電話がこなかったとしてもダメなんです

従業員には、休憩時間を自由に利用できるようにしなければなりません。

そのため、「ご飯食べててもいいけど、お客さんや電話がきたら対応してね」では、休憩を取らせたことになりません。

「来るか来ないか分からないけれど来たら対応せよ」という指揮命令をしているので、この時間は休憩時間ではなく労働時間となり、賃金支払い義務が生じます。

もし来客や電話対応が必要なのであれば、業種と労使協定の必要性を確認した上で、時間をずらして休憩を取らせるようにしましょう。

ただし、自由には制約がつきものです。

従業員が休憩中に会社の施設に滞在している限り、会社の施設や設備の使用方法などのルールは、当然に守らせることができます。

また、従業員としての秩序維持義務も、当然に守らせることができます。

シモデ
シモデ

休憩時間は、自由に利用させる必要がある。来客や電話対応が必要なら、時間をずらして休憩を取らせなければなりません

休憩時間のルールまとめ

  • 1日の労働時間が6時間を超えたら45分以上、8時間を超えたら60分以上の休憩を、労働時間の途中に取らせなければならない。
  • 休憩は、事業場において一斉に付与しなければならない。一部の業種において、あるいは労使協定によって一斉付与の適用を除外することができる。
  • 従業員には休憩時間を自由に利用させなければならない。来客や電話対応をさせると、休憩を取らせたことにならない。
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複雑すぎる!妊娠・出産・育児の社会保険【復帰編】https://nudge.blog/ikuji-hukki/Sat, 28 Aug 2021 03:59:00 +0000https://nudge.blog/?p=1650

社会保険の手続きの中で、慣れるのに一番時間がかかったのが、妊娠・出産・育児の手続きです。 当たり前ですが、予定通りいかないイベントですし、突発的なことが起きたり、休業中の従業員から取得すべき情報が多かったり、いろいろなパ ... ]]>

社会保険の手続きの中で、慣れるのに一番時間がかかったのが、妊娠・出産・育児の手続きです。

当たり前ですが、予定通りいかないイベントですし、突発的なことが起きたり、休業中の従業員から取得すべき情報が多かったり、いろいろなパターンがあるからです。

今回は、妊娠・出産・育児に関して、職場復帰後の社会保険制度・手続きを紹介します。

育児中に使える社会保険制度

産後休業や育児休業を終えたら、復帰の準備ですね

シモデ
シモデ

従業員とのコミュニケーションが大切です

働きながら育児をするのに使える制度は何があるのでしょうか?

シモデ
シモデ

労働時間を多少は柔軟にできるような制度があります

育児休業を取得した方のうち、多くの人が職場復帰するようです。

育児休業を取得して復帰予定だった方が、復帰したか退職したかの割合は、下表の通りです。(厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」)

復職者(%)退職者(%)
女性89.510.5
男性95.05.0

まず、3歳に満たない子どもを育てる従業員が使える制度が、以下の2つです。

  • 所定外労働の免除
  • 短時間勤務制度(原則6時間)

1年生になるまでの子どもを育てる従業員が使える制度は、以下の3つです。

  • 子どもを看護するための休暇
  • 時間外労働の制限(1ヶ月24時間、1年150時間以下)
  • 深夜(22時〜翌5時)業の免除

所定外労働の免除

3歳に満たない子どもを育てる従業員から請求があった場合には、所定労働時間を超えて働かせてはいけません。

従業員には、1ヶ月以上1年以内の間で、期間を設定してもらいましょう。請求回数に制限はありません。

労使協定を締結した場合には、入社1年未満、あるいは1週間の所定労働日数が2日以下の従業員を対象外にすることができます。

短時間勤務制度(原則6時間)

3歳に満たない子どもを育てる従業員に対して、1日の所定労働時間を原則6時間とする短時間勤務制度を設けなくてはいけません。

労使協定を締結した場合には、入社1年未満、1週間の所定労働日数が2日以下、あるいは業務上短時間勤務が困難な業務に従事する(※)従業員を対象外にすることができます。

※短時間勤務が困難な従業員を短時間勤務制度の対象外とした場合には、以下4つのいずれかの措置を講じなければなりません。

  • 育児休業に関する制度に準ずる措置
  • フレックスタイム制度
  • 始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げ(時差出勤の制度)
  • 事業所内保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与

子どもを看護するための休暇

1年生になるまでの子どもを育てる従業員から、子どもの病気やケガの看護、健康診断や予防接種などで病院に行くための休暇の請求があった場合には、を取得させなければなりません。

取得可能な日数は、1年に5日(子どもが2人以上の場合には10日)までです。

取得単位は、1時間です。原則、始業時刻か終業時刻に接した時間で取得してもらいます。

労使協定を締結した場合には、1日未満の単位で休暇を取得させることが困難な業務に従事する従業員を対象外にすることができます。

時間外労働の制限(1ヶ月24時間、1年150時間以下)

1年生になるまでの子どもを育てる従業員から請求があった場合には、1ヶ月24時間、1年間150時間を超えて法定時間外労働をさせてはいけません。

従業員には、1ヶ月以上1年以内の間で、期間を設定してもらいましょう。請求回数に制限はありません。

日雇い、入社1年未満、あるいは1週間の所定労働日数が2日以下の従業員からの請求に対しては、法的には承諾する必要はありません。

深夜(22時〜翌5時)業の免除

1年生になるまでの子どもを育てる従業員から請求があった場合には、22時〜翌5時までの深夜に働かせてはいけません。

従業員には、1ヶ月以上6ヶ月以内の間で、期間を設定してもらいましょう。請求回数に制限はありません。

日雇い、入社1年未満、1週間の所定労働日数が2日以下、あるいは所定労働時間の全部が深夜にある従業員からの請求に対しては、法的には承諾する必要はありません。

また、その従業員に、以下に該当するような、子どもの面倒を見ることができる16歳以上の同居の家族がいる場合にも、法的には請求に応じなくても構いません。

  • 深夜に就労していない(深夜の就労日数が1ヶ月につき3日以下の者を含む)
  • 負傷や疾病、心身の障害により保育が困難でない
  • 産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間以内でない

上記5つの制度は、法的に会社に義務づけられているものであって、就業規則に規定がある・ないに関わりません。

所定労働時間を短くしたり、休暇を取得させたりした時間は、業務に従事していないため、賃金支払い義務はありません。

ちなみに、所定外労働の免除(制限)と短時間勤務制度の導入率は、6割以上の回答となっています。(厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」)

シモデ
シモデ

3歳未満の子を育てる従業員が使える制度は「所定労働時間の免除」と「短時間勤務制度」。1年生になるまでの子を育てる従業員が使える制度は「子どもを看護するための休暇」「時間外労働の制限(1ヶ月24時間、1年150時間未満)」「深夜(22時〜翌5時)業の免除」

月額変更と養育特例

育児中の従業員が使える制度は5つあるんですね

シモデ
シモデ

従業員への周知も大事ですね

働らく時間が短くなるのはいいけどお給料は減りますね

シモデ
シモデ

社会保険料については特例があります

育児休業を終えて短時間勤務になった、3歳未満の子どもを育てる従業員は、たいてい、お給料額が下がると思います。

控除される社会保険料が従前のままだと、手取りが少なくなるため、この状態を補正するのが「育児休業等終了時の月額変更」です。

通常の月額変更は、2等級以上の変動がないと要件に該当しないのですが、「育児休業等終了時の月額変更」は1等級でも下がれば要件に該当することになります。

(参考:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」(外部リンクが開きます))

控除される社会保険料が少なくなるのはいいものの、年金額にも影響してくるため、この状態を補正するのが「養育特例」です。

年金額は、従前の社会保険料額を算定の基礎とすることができる手続きです。

つまり、短時間勤務中、実際に控除される社会保険料は「育児休業等終了時の月額変更」の手続きにより少なくなったとしても、「養育特例」の手続きをすることで年金額には影響がないようにするということです。

(参考:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」(外部リンクが開きます))

シモデ
シモデ

育児休業から復帰後、短時間勤務になる場合には「育児休業等終了時の月額変更」と「養育特例」の手続きを行うことができます

不利益取り扱いは禁止!

短時間勤務には社会保険料の特例があるんですね

シモデ
シモデ

忘れずに手続きしたいですね

みんなちゃんと制度を使えているのでしょうか?

シモデ
シモデ

不利益取り扱いを受けたと感じている人も多いみたいです

育児休業含め、「1.育児中に使える社会保険制度」の5つの制度を利用したり、利用したいと申し出たことを理由にした不利益な取り扱いをすることは、禁止されています。(育児介護休業法)

不利益な取り扱いとは、例えば以下のものを指します。

  • 解雇する
  • 有期契約の従業員に対して、契約の更新をしない
  • あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、その回数を引き下げる
  • 退職を強要する
  • 労働契約内容の変更を強要する
  • 自宅待機を命ずる
  • 従業員が希望する期間を超えて、本人の意に反して所定外労働の制限(免除)、時間外労働の制限、深夜業の制限(免除)または所定労働時間の短縮措置等を適用する
  • 降格させる
  • 減給する
  • 賞与等において不利益な算定をする
  • 人事考課において不利益な評価をする
  • 不利益な配置の変更を行う
  • 就業環境を害する

実際に不利益取り扱いを受けたと回答している方のうち、約半数の人が「権利を主張しづらくなるような発言をされた」と回答しています。(JILPT「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査」より作成)

妊娠等を理由とする不利益取り扱いの態様%(n=984、複数回答)
解雇16.6
雇い止め18.0
契約更新回数の引き下げ6.0
労働契約内容の変更の強要14.4
自宅待機命令5.0
降格7.6
減給12.7
賞与等における不利益な算定18.4
人事考課における不利益な算定14.6
不利益な配置変更14.0
就業環境が害された12.6
上のいずれかを示唆するような発言をされた21.1
「休むなんて迷惑だ」「辞めたら?」など
権利を主張しづらくなるような発言をされた
47.0

ただ、裁判になるほど揉めるような事例はやはり、契約の解消(解雇や雇い止め)や降格、減給など、金銭が絡む事案が多いと思います。

シモデ
シモデ

育児休業等の制度を利用したり、利用したいと申し出たことを理由に不利益な取り扱いをすることは禁止されています

育児休業から復帰したときの手続きまとめ

  • 育児と仕事を両立するための主な制度は、所定外労働の免除、短時間勤務制度、子の看護休暇、時間外労働の制限、深夜業の免除の5つ。
  • 育児休業から復帰して短時間勤務をしている場合、育児休業等終了時の月額変更と養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置の手続きができる。
  • 育児に関連する制度を利用したり、利用したいと申し出たことを理由に、解雇等の不利益な取り扱いをすることは禁止されている。
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募集時・採用時における労働条件の明示https://nudge.blog/jyoken-meiji/Fri, 27 Aug 2021 12:40:00 +0000https://nudge.blog/?p=1571

就職先を探している人が仕事を決める要因の一つが、労働条件が良いことです。 「労働条件が良い」には、いろいろな意味が含まれると思います。 少なくとも、あいまいな部分をなくそうとしているとか、募集時に提示した条件と異なるなら ... ]]>

就職先を探している人が仕事を決める要因の一つが、労働条件が良いことです。

「労働条件が良い」には、いろいろな意味が含まれると思います。

少なくとも、あいまいな部分をなくそうとしているとか、募集時に提示した条件と異なるならきちんと説明するかといったところで、応募者は会社の誠意を見ています。

今回は、募集時と採用時の労働条件の明示について紹介します。

仕事を決める理由・辞める理由

人事労務担当者
人事労務担当者

やっぱりお給料が高くないと応募者は来てくれないのでしょうか?

シモデ
シモデ

意外にも、お給料の高さは主な要因ではありません

人事労務担当者
人事労務担当者

何を理由に仕事を決める人が多いのでしょうか?

シモデ
シモデ

収入以外の労働条件の良さが第2位になっています

自分の会社で働いてくれている人が、いつ会社を辞めてしまうかは、誰にも分からないものです。

ただ、採用するときには、できるだけ長く働いて欲しいと思う方が多いのではないかと思います。

お給料が高くなければ応募者が来てくれないと考えていらっしゃるのなら、それは誤解です。

中途で転職した人(有期は含む、パートは除く)が、勤める会社を選んだ理由を見てみましょう。(厚生労働省「2019年雇用動向調査」より作成)

現在の勤め先を選んだ理由
仕事の内容に興味があった501.4(22.6%)567.2(22.3%)1,068.5(22.4%)
能力・個性・資格が生かせる338.7(15.3%)344.7(13.5%)683.4(14.4%)
会社の将来性が期待できる116.6(5.3%)48.2(1.9%)164.7(3.5%)
給料等収入が多い127.5(5.8%)149.8(5.9%)277.3(5.8%)
労働時間、休日等の労働条件が良い259.9(11.7%)564.1(22.1%)824.0(17.3%)
通勤が便利177.3(8.0%)328.1(12.9%)505.4(10.6%)
とにかく仕事に就きたかった264.9(12.0%)280.0(11.0%)544.9(11.4%)
その他の理由(出向等を含む)426.8(19.3%)264.3(10.4%)691.1(14.5%)
(単位は千人、カッコ内は%)

「給料等収入が多い」は、選択肢の中では下から2番目に低い数値となっています。

一方で、収入以外の「労働時間、休日等の労働条件の良さ」は、「仕事の内容に興味があった」に次いで2番目に高くなっています。

自社の仕事の魅力を語るのと同時に、労働条件を整えておき、それを伝えることが大切だということが分かります。

次に、中途で転職した人(有期は含む、パートは除く)が、前の会社を辞めた理由は、下表の通りです。

前の勤め先を辞めた理由
仕事の内容に興味を持てなかった108.5(4.8%)138.6(5.5%)247.1(5.2%)
能力・個性・資格を生かせなかった122.2(5.5%)81.0(3.2%)203.2(4.3%)
職場の人間関係が好ましくなかった210.5(9.5%)382.5(15.1%)592.9(12.4%)
会社の将来性が不安だった164.2(7.4%)104.9(4.1%)269.0(5.6%)
給料等収入が少なかった196.6(8.8%)242.6(9.6%)439.2(9.2%)
労働時間、休日等の労働条件が悪かった253.4(11.4%)323.8(12.8%)577.2(12.1%)
結婚8.6(0.4%)62.3(2.5%)71.0(1.5%)
出産・育児9.4(0.4%)48.6(1.9%)58.0(1.2%)
介護・看護16.4(0.7%)37.0(1.5%)53.4(1.1%)
定年・契約期間の満了373.7(16.8%)277.9(10.9%)651.6(13.7%)
会社都合142.0(6.4%)150.2(5.9%)292.2(6.1%)
その他の理由(出向等を含む)619.3(27.8%)689.7(27.2%)1,309.0(27.5%)
(単位は千人、カッコ内は%)

「定年・契約期間の満了」を除くと、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」は、「職場の人間関係が好ましくなかった」に次いで2番目に高くなっています。

応募者が採用の過程で想像している労働条件と、働いてから感じる労働条件のギャップを小さくすることは、少なくとも大切なことだと考えます。

シモデ
シモデ

募集前に労働時間や休日等の労働条件を整えておき、応募者にきちんと伝えることが大切です

募集時の労働条件の明示

人事労務担当者
人事労務担当者

収入以外の労働条件が魅力になるんですね

シモデ
シモデ

応募者はきっと、比較検討してよく見極めていますよね

人事労務担当者
人事労務担当者

募集するときには具体的に何を明示すればいいのでしょうか?

シモデ
シモデ

10個の労働条件を明示する必要があります

人を募集するときに、明示しなければならない労働条件は、以下の10個です。(職業安定法第5条の3、職業安定法施行規則第4条の2第3項)

  1. 業務の内容
  2. 労働契約の期間
  3. 試用期間の有無・長さ
  4. 就業場所
  5. 労働時間(始業・終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日)
  6. 賃金の額
  7. 社会保険・労働保険の適用
  8. 雇用する者の氏名や会社名
  9. 雇用形態(派遣かどうか)
  10. 受動喫煙を防止するための措置に関する事項

これらは、原則、書面で明示する必要がありますが、応募者が希望した場合には電子メール等でも構いません。

実際に選考が進み、応募者との話し合いの中で、個々の労働条件が変わることもあるでしょう。

しかし、上記10個の労働条件は、実際に応募者との話し合いが進む前の人を募集する時点で、会社が想定している労働条件を明らかにしておかなければならないのです。

とくに「1.業務の内容」や「5.労働時間」は、応募者がよく見ている項目なので、実態とギャップがないようにすることが大切だと思います。

ギャップが大きければ、遅かれ早かれ人は辞めてしまうからです。

また、「10.受動喫煙を防止するための措置に関する事項」は、2020年4月1日に追加された項目です。

たとえば、「敷地内(屋内)禁煙」や、「屋内原則禁煙(喫煙ルーム有り)」などと記載することが考えられます。

なお、募集時の労働条件を労働条件締結前に変更した場合には、変更内容も明示するよう求められています。

たとえば、募集時には「基本給25万円〜30万円」としていた場合には、内定を出す前や入社前に「あなたの基本給は28万円です」と明示するようにしましょう。

シモデ
シモデ

募集時には、業務の内容や労働時間、賃金の額などの10項目を、原則書面で明示しなければなりません

採用時の労働条件の明示

人事労務担当者
人事労務担当者

募集の時にも労働条件をきちんと明示することが大事ですね

シモデ
シモデ

お給料の額を気にするだけでは足りなさそうですよね

人事労務担当者
人事労務担当者

採用を決定したらどうしたらいいのでしょうか?

シモデ
シモデ

採用時には改めて労働条件を明示しなければなりません

選考を終えて無事、労働契約を締結することが決まったら、以下の14個の労働条件を明示する必要があります。(労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  4. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  5. 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  7. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  8. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  9. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  10. 安全及び衛生に関する事項
  11. 職業訓練に関する事項
  12. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  13. 表彰及び制裁に関する事項
  14. 休職に関する事項

上記のうち1〜6は、5の昇給に関する事項を除き、書面で提示しなければなりません。

募集時と同様、本人が希望した場合には、電子メール等での明示でもOKです。

そして、1〜6のうち赤字の部分は、募集時に明示すべき労働条件から追加されている項目です。

採用時に労働条件を明示する書面は、「労働契約書」「雇用契約書」「労働条件通知書」のいずれでも構いません。

労働条件通知書については、厚生労働省がひな型を公開していますので参考にしてみてください。

厚生労働省「労働条件通知書(一般労働者用;常用、有期雇用型)」(外部リンクが開きます)

シモデ
シモデ

採用時には、労働時間、賃金の決定・計算・支払い方法、退職に関する事項などの6項目を、原則書面で明示しなければなりません

労働条件の明示まとめ

  • 勤める会社を決めるときも会社を辞めるときも、労働時間や休日等の労働条件を重視する人が多い
  • 募集時には、業務の内容や労働時間、賃金の額などの10項目を、原則書面で明示する
  • 採用時には、労働時間、賃金の決定・計算・支払い方法、退職に関する事項などの6項目を、原則書面で明示する
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年次有給休暇の年5日時季指定義務https://nudge.blog/jikishitei/Thu, 26 Aug 2021 07:45:00 +0000https://nudge.blog/?p=1533

2019年4月1日から、「年次有給休暇の時季指定義務」がスタートしました。 年次有給休暇を年10日以上与えられる従業員に対して、各従業員が保有している日数のうち5日については、会社が時季を指定して取得させなければならない ... ]]>

2019年4月1日から、「年次有給休暇の時季指定義務」がスタートしました。

年次有給休暇を年10日以上与えられる従業員に対して、各従業員が保有している日数のうち5日については、会社が時季を指定して取得させなければならないというルールです。

付与日から1年ごとにチェックする必要があります。

今回は、年次有給休暇の時期指定義務について紹介します。

年次有給休暇の取得率は?

人事労務担当者
人事労務担当者

年次有給休暇の取得日数も管理が必要なんですね

シモデ
シモデ

労働時間に関することは、管理が求められていますね

人事労務担当者
人事労務担当者

どうして管理が必要になったのでしょうか?

シモデ
シモデ

取得率を上げるという国の目標があるみたいです

年次有給休暇の取得率は、2000年以降から少しずつ上昇しています。(JILPT「早わかり グラフで見る長期労働統計)

2019年は、52.4%でした(取得率=1年間の総取得日数÷当年度の付与日数×100%)。

国としては、2020年までに70%の取得率を目指していました

祝日が増えたり、あるいは休日数を増やしている会社さんもありますので、年次有給休暇の取得率だけで評価されるものでもないと思います。

ただ、2019年までは、年間の労働時間は2,000時間前後と高止まりしていました。(大阪労働局資料より)

このような背景から、年次有給休暇の時季指定義務はスタートしました。

コロナ禍で労働時間がどうなっているかはさておき、このルールは引き続き適用されることになります。

シモデ
シモデ

年次有給休暇の取得率70%を目指して、会社に対する時季指定義務がスタートしました

年次有給休暇の付与条件は?

人事労務担当者
人事労務担当者

取得率アップを目指して作られたルールなんですね

シモデ
シモデ

休日数を増やすなら年次有給休暇を取りやすくした方がいいかもしれませんね

人事労務担当者
人事労務担当者

具体的にはどういうルールなのでしょうか?

シモデ
シモデ

まずは年次有給休暇の基礎知識を確認しましょう

年次有給休暇を付与する条件は、以下の2つです。

  1. 継続勤務年数が半年以上
  2. 出勤率8割以上

出勤率は、「出勤した日÷全労働日」で求めます。

全労働日は、雇用契約書や就業規則で定めた労働日を指します。

ただし、以下の日は、全労働日(分母・分子の両方)から除きます。

  • 不可抗力による休業日
  • 会社側に起因する経営、管理上の障害による休業日
  • 正当な争議行為(ストライキなど)により就労しなかった日

また、以下の日は、出勤したものとみなして(分母・分子の両方にカウントして)計算します。

  • 業務上の傷病により療養のため休業した期間
  • 産前産後の休業期間
  • 育児介護の休業期間
  • 年次有給休暇を取得した期間

入社半年の時点では過去6ヶ月、その1年後からは過去1年間の出勤率を確認し、8割以上ならば、下表の日数を付与します。

週所定労働日数1年間の
所定労働日数
継続勤務年数
0.5年
継続勤務年数
1.5年
継続勤務年数
2.5年
継続勤務年数
3.5年
継続勤務年数
4.5年
継続勤務年数
5.5年
継続勤務年数
6.5年以上
5日以上217日〜10111214161820
4日169日〜216日10121315
3日121日〜168日1011
2日73日〜120日
1日48日〜72日

年次有給休暇を付与しなければならないのは、正社員に限りません。

パートタイマーやアルバイトなど、雇用形態にかかわらず、週にどのくらい働くのかによって、その年に付与する日数が決まります

週所定労働日数が5日以上、1年間の所定労働日数が217日以上、または週所定労働日数が4日以下でも週所定労働時間が30時間以上の従業員には、入社半年で10日付与します。

週所定労働時間が30時間未満であって、週4日または年に216日以下の従業員には、入社半年で7日付与することになります。

週の所定労働日数や時間が決まっていないときには、年次有給休暇を付与する年度の「1年間の所定労働日数」で確認する、という流れです。

また、原則、従業員が年次有給休暇を取得する権利は強いものであり、会社が理由を聞いた上で判断したり、一方的に日にちを変えていいものではありません。

もしも業務に差し支えがあるのなら、話し合いで調整するよう努めてください。

シモデ
シモデ

年次年次有給休暇の付与日数は、雇用形態ではなく「週にどのくらい働くか」で決まります

時季指定義務とは?

人事労務担当者
人事労務担当者

年次有給休暇を取得できるのは正社員だけじゃないんですね

シモデ
シモデ

週に働く日数や時間によって付与日数の管理が必要ですね

人事労務担当者
人事労務担当者

それで、「年5日」っていうのはなんなのでしょうか?

シモデ
シモデ

時季指定義務で取得させなきゃいけない日数のことです

時季指定義務とは、年に10日以上年次有給休暇が付与される従業員には、年に5日以上年時有給休暇を取得させなければならないというルールです。

上記の表の通り、1年間に10日以上付与するのは、以下の3パターンです。

  1. 週所定労働日数が5日以上、1年間の所定労働日数が217日以上、または週所定労働日数が4日以下でも週所定労働時間が30時間以上で、継続勤務年数が0.5年以上
  2. 週所定労働時間が30時間未満かつ週所定労働日数が4日で、継続勤務年数が3.5年以上
  3. 週所定労働時間が30時間未満かつ週所定労働日数が3日で、継続勤務年数が5.5年以上

パートタイマーであっても、勤続年数が長くなってくると、付与日数だけでなく取得日数の管理も必要だということです。

「年5日」の「年」とは、付与日から1年間という意味です。

たとえば、入社日が2018年4月1日のパートタイマーの方で、1日の所定労働時間が5時間、週に4日働いているとします。

2021年10月1日に継続勤務年数3.5年となり、過去1年間の出勤率が8割を超えていれば、10月1日に10日の年次有給休暇を付与します。

そして、2022年9月末までの1年間で、5日取得したかどうか管理する必要がある、ということです。

シモデ
シモデ

年に10日以上年次有給休暇が付与される従業員には、年に5日以上年時有給休暇を取得させなければなりません

時季指定義務への2つの対応策

人事労務担当者
人事労務担当者

入社日と働く日数や時間をチェックして管理するのは大変ですね

シモデ
シモデ

年次有給休暇の管理簿を作成する義務があります

人事労務担当者
人事労務担当者

そのほかにいい方法はありますか?

シモデ
シモデ

「計画的付与」も検討しましょう

時季指定義務をはたすための対応策の一つ目は、年次有給休暇の管理簿を作成することです。

従業員ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、以下の3つを記載することが義務づけられています。

  1. 年次有給休暇を付与した日
  2. 年次有給休暇を取得した日付
  3. 取得日数の合計

この管理簿は、年次有給休暇を付与した年度と、その年度終了後3年間保存しなければなりません。

3つの事項は、賃金台帳に合わせて記載することでも差し支えありません。

対応策の二つ目は、計画的付与を行うことです。

「年5日」にカウントできるのは次の3パターンで、計画的付与をした日数も含まれます。

  1. 従業員自身が取得した日数(繰り越し分も含む)
  2. 計画的付与をした日数
  3. 半日単位の年次有給休暇

「1.従業員自身が取得した日数(繰り越し分も含む)」の「繰り越し分」とは、年次有給休暇の時効は付与日から2年なので、「年5日」は必ずしもその年に付与した年次有給休暇でなくてもいいということです。

「3.半日単位の年次有給休暇」は、従業員から希望があって会社が同意すれば、年時有給休暇を半日単位で取得できるというルールです。

ただ、年時有給休暇は仕事から離れて体を休ませリフレッシュすることが制度の趣旨なので、1日単位の取得が原則となります。

そして、計画的付与とは、会社と従業員とで労使協定を締結することによって、あらかじめ決めた日に年次有給休暇を取得させるという制度です。

ただし、各従業員が保有している日数のうち、自由に使える日数を5日は残す必要があります。

計画的付与は、労使協定を締結するなどの手続きは生じますが、個別に「年5日」を管理しなくて良くなるというメリットがあります。

そして、年次有給休暇管理簿を作成し、年次有給休暇の取得を促進したり、計画的付与を行ったりしても、なお「年5日」取得していない従業員に対しては、会社が時季を指定して、年次有給休暇を取得させるという流れになります。

シモデ
シモデ

年次有給休暇管理簿を作成して3年間保存しなければならない。計画的付与を導入すると、個別に管理する手間が省けます

年次有給休暇の時季指定義務まとめ

  • 雇用形態にかかわらず、年に10日以上年次有給休暇が付与される従業員には、年に5日以上年次有給休暇を取得させなければならない
  • 入社日、週に働く時間・日数、年次有給休暇の付与日、出勤率、勤続年数をチェックする必要がある
  • 年次有給休暇の管理簿には、付与日、年次有給休暇を取得した日付、取得日数を記載して、3年間保存する
  • 労使協定を締結して計画的付与を導入すると、個別に管理する手間は省ける
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【FAQ】試用期間の正しい運用方法https://nudge.blog/faq-shiyou/Wed, 25 Aug 2021 14:00:00 +0000https://nudge.blog/?p=1530

社労士のシモデ(@sr_shmd)です。 突然ですが人事労務に関するクイズです。 正解は・・・ある意味で(1)〜(5)のすべてが正解ですが、「(4) 試用期間でも簡単に解雇はできない」が一番重要です! この記事では、試用 ... ]]>

社労士のシモデ(@sr_shmd)です。

突然ですが人事労務に関するクイズです。

試用期間はどのように運用するとよいでしょうか?
答えは次のうちどれでしょう?
(1) 試用期間は設けなくてもよい
(2) 試用期間を短縮できる
(3) 試用期間を延長できる
(4) 試用期間でも簡単に解雇はできない
(5) 試用期間の途中で解雇することができる

正解は・・・ある意味で(1)〜(5)のすべてが正解ですが、「(4) 試用期間でも簡単に解雇はできない」が一番重要です!

この記事では、試用期間の正しい運用方法について解説します。

シモデ
シモデ

この記事は次のような人にオススメです!

  • 就業規則を担当している人事労務担当者
  • 新入社員の教育担当者
  • 社労士試験の受験生

試用期間で適性を判断する

試用期間中にやるべきことは、会社・従業員ともに「お互いに合っているのか」を確かめることです。

時間とお金をかけて採用活動をしても、やはり実際に一緒に働いてみないと分からないことがたくさんあると思います。

能力もそうですし、会社の風土に合うかどうかを判断することも重要です。

試用期間は「この先一緒に働いていけるのか」をお互いに判断する大事な時期です。

そのため、従業員が何か不注意なことを行ったり、勤務態度が悪いなどネガティブな行動を取ったりした場合には、きちんと注意・指導しなければなりません。

なんとなく試用期間の終わりを迎えてしまい、そこから「どうしよう?」と悩んでも遅いのです。

試用期間の数ヶ月の間に、自社の従業員として適性があるか、本採用するかどうかを決断しましょう。

試用期間は正社員に対して適用する

試用期間には、「この先一緒に働いていけるのか」を検討するという役割があります。

したがって、基本的には長期雇用を前提とした正社員に対して設けるものです。

パートタイマーやアルバイト、有期雇用の契約社員などには、試用期間を設けないことが一般的です。

また、正社員であってもお互いに十分知り合っている関係なのであれば、その方に対しては試用期間を適用しないこととしても構いません。

就業規則に試用期間のルールを記載しておく

試用期間を会社の制度として設けるのであれば、就業規則に運用ルールを明記しておきましょう

会社のルールとして明らかにしておかないと、従業員とのトラブルが生まれるきっかけになってしまいます。

就業規則に記載する内容は、主に以下のようなことです。

  • 試用期間の長さ(3〜6ヶ月が多い)
  • 試用期間を短縮 or 延長することがあること
  • 本採用を判断する具体的な基準
  • 本採用は、試用期間の途中〜満了日までに決定すること

就業規則については、以下の記事で解説していますので参考にしてください。

試用期間中でも簡単には解雇できない

労働基準法に、「試用期間が始まって14日以内なら解雇予告のルールが適用されない」という条文があります。

解雇予告のルールとは、「解雇をするなら少なくとも30日前に予告するか、平均賃金30日分を支払え」というものです。

このルールを「試用期間中なら解雇が簡単にできる」と勘違いしている方がときどきいらっしゃいます。

試用期間の14日以内なら単に解雇予告か平均賃金の支払いが法的には不要というルールなのであって、試用期間の14日以内なら解雇が簡単にできるわけではないのです。

試用期間であっても解雇、つまり本採用拒否をするのなら「客観的に合理的な理由」が必要とされています。

そのためにも、試用期間はただ何となく過ごしてよいものではないのです。

従業員の不注意等に対しては注意・指導し、記録を残しておきます。

場合によっては書面での注意・指導も必要です。

おおげさに感じるかもしれませんが、もし本採用拒否について従業員ともめた場合には、「客観的に合理的な理由」があったから解雇をしたのだということを、第三者に説明して納得してもらわなければなりません。

なぜなら、日本の雇用社会では解雇がむずかしいからです。

ただし、一度採用してしまったら絶対に解雇ができないわけではありません。

試用期間は「今後長く一緒に働いていけるか」を判断するためのものですので、先のことを考えれば、お互いに合わないなら関係を解消するのが一番だと思います。

しかし、関係を解消するにしても、いきなり解雇(本採用拒否)を通知するのではなく、まずは話し合いによって労働契約を解消することを目指すことがベストです。

試用期間の正しい運用方法まとめ

試用期間はどのように運用するとよいでしょうか?
一般的には長期雇用の正社員に3〜6ヶ月の試用期間を設けます。就業規則には、期間の長さや短縮・延長について、本採用判断の基準等を記載しておきましょう。また、試用期間でも簡単に解雇できるわけではないことにも注意しましょう。
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最低賃金とは?ルールや計算方法を分かりやすく解説https://nudge.blog/saitei-chingin/Mon, 23 Aug 2021 14:40:00 +0000https://nudge.blog/?p=1522

「バイトの時給は最低賃金を下回っていないから大丈夫」 そこでチェックを終了していたらかなり危険です! 最低賃金は月給制でも確認しなければなりませんし、毎年10月の改定に合わせた確認も必要です。 今回は、最低賃金の基礎知識 ... ]]>

「バイトの時給は最低賃金を下回っていないから大丈夫」

そこでチェックを終了していたらかなり危険です!

最低賃金は月給制でも確認しなければなりませんし、毎年10月の改定に合わせた確認も必要です。

今回は、最低賃金の基礎知識を紹介します。

合意で決まる賃金へのセーフティネット

人事労務担当者
人事労務担当者

最低賃金は、絶対に守らないといけないのですか?

シモデ
シモデ

守らないと過去の分を支払うよう命令される可能性があります

人事労務担当者
人事労務担当者

どうやって確認すればいいのでしょうか?

シモデ
シモデ

まずはルールの基本事項を確認していきましょう

本来、労働契約は当事者間が、自由に合意して締結するものです。

そして、どのくらい働いて、それに対してどのくらいの賃金をどういった内容(基本給、手当など)で支払うかも、合意で決めることができます。

しかし、自由には責任がつきものです。

その責任の一つが、「最低賃金」というルールです。

会社は、従業員の最低限の生活を保障する程度の賃金を支払う必要があります。

最低賃金は、1時間当たりの賃金に換算して確認します

アルバイトの時給はもちろんですが、月給制であっても1時間当たりに換算すると最低賃金を下回っているかもしれないので要注意です。

最低賃金を下回っていると、過去にさかのぼって賃金を支払えと命じられる可能性があります。

また、50万円以下の罰金という罰則も定められています。(最低賃金法第40条)

命令や指導に従わず悪質だと判断されると、送検される可能性もあり、令和元年には15件の送検事例があります。(厚生労働省労働基準局「平成31年・令和元年労働基準監督年報」)

シモデ
シモデ

最低賃金は、合意で決められる労働契約におけるセーフティネット。時間当たりに換算して確認します

都道府県ごとに賃金額が決まっている

人事労務担当者
人事労務担当者

時間当たりの額に換算するんですね

シモデ
シモデ

毎年発表される最低賃金額と照らしあわせてくださいね

人事労務担当者
人事労務担当者

どこで最低賃金額がわかりますか?

シモデ
シモデ

厚生労働省のホームページに掲載されています

最低賃金は、時給制のアルバイトやパートタイマーを募集するときだけでなく、その後も毎年チェックが必要です。

最低賃金額は、毎年9月頃に厚生労働省のホームページに掲載されます

また、最低賃金額は、都道府県ごとに決まっています。

各地域の物価や相場が反映されるためです。

ちなみに、2021年8月現在の東京都の最低賃金は、1,013円/時です。

参考:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(外部リンクが開きます)

なお、一部の事業や職業に関しては、都道府県ごとの最低賃金(「地域別最低賃金」)とは別の「特定最低賃金」が定められています。

たとえば、埼玉や千葉では、情報通信機械器具製造業や各種商品小売業に対して、地域別最低賃金を上回る特定最低賃金が適用されますので、あわせて確認が必要です。

参考:厚生労働省「令和2年度 特定最低賃金の審議・決定状況」(外部リンクが開きます)

シモデ
シモデ

毎年9月ごろに地域別最低賃金をチェックする。特定最低賃金が適用される会社は、毎年12月ごろにもチェックが必要です

最低賃金はどうやって計算する?

人事労務担当者
人事労務担当者

9月頃にホームページで確認するといいんですね

シモデ
シモデ

給与計算のチェックリストに入れておくといいですね

人事労務担当者
人事労務担当者

時間当たりに換算するのはどうすればいいですか?

シモデ
シモデ

対象になる賃金を確認するところから始めましょう

最低賃金を計算するときに対象となる賃金は、毎月支払っている基本的な賃金です。

具体的には、実際に支払われる賃金から以下4つの賃金を除外したものが、最低賃金の対象となります。

  1. 臨時に支払う賃金(結婚手当など)
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 時間外・休日・深夜勤務に対する割増賃金
  4. 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

たとえば、アルバイトやパートタイマーの時給制の方で、基本給と通勤手当を支払っているのでしたら、基本給のみで最低賃金を上回っているか確認します。

月給制の場合はどうでしょうか。

ここで用いるのは、「1ヶ月の平均所定労働時間」です。

つまり、1日の所定労働時間が8時間、1年間の所定労働日数が250日なら、

8×250÷12=166.666…

となり、1ヶ月の平均所定労働時間を求めることができます。

このとき、基本給25万円、資格手当5万円、通勤手当1万円ならば、東京都の最低賃金を上回っているでしょうか。

通勤手当は、最低賃金の対象とはならないため除きます。

対象となる賃金額を、1ヶ月の平均所定労働時間で割ると、

(250,000+50,000)÷166.666…=1,800

となり、東京都の最低賃金1,013円/を超えていることが分かります。

これが、基本給17万5千円、資格手当5千円、通勤手当1万円だと、

(175,000+5,000)÷166.666…=1,080

となり、東京都の場合は最低賃金を下回っているため、是正しなければなりません。

賃金額だけでなく、1ヶ月で平均どのくらい働かせるのかも関わってきます。

最低賃金の確認には、1年間の休日の設定や1日の所定労働時間の設定も、あわせてチェックすることが必要です。

シモデ
シモデ

毎月支払っている基本的な賃金が最低賃金の対象となる。月給制なら、1ヶ月の平均所定労働時間を用いて賃金を時間換算しましょう

最低賃金のルールと計算方法まとめ

  • 最低賃金は、合意で締結する労働契約に対するセーフティネット。最低賃金額を下回っていると過去分の支払いや罰金を命じられたり、悪質だと送検される可能性がある。
  • 厚生労働省のホームページで、毎年9月ころには地域別最低賃金、毎年12月ころには特定最低賃金額を確認する。
  • 月給制の場合は、毎月支払っている基本的な賃金の金額を1ヶ月の平均所定労働時間で割った金額と、最低賃金額とを照らしあわせて確認する。
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複雑すぎる!妊娠・出産・育児の社会保険【休業編】https://nudge.blog/ikuji-kyugyo/Sun, 22 Aug 2021 12:00:00 +0000https://nudge.blog/?p=1512

社会保険の手続きの中で、慣れるのに一番時間がかかったのが、妊娠・出産・育児の手続きです。 制度の趣旨を理解するのが難しいこと、電子ではなく紙でしか申請を受けつけていないこと、日付を管理して給与に反映させる必要があることな ... ]]>

社会保険の手続きの中で、慣れるのに一番時間がかかったのが、妊娠・出産・育児の手続きです。

制度の趣旨を理解するのが難しいこと、電子ではなく紙でしか申請を受けつけていないこと、日付を管理して給与に反映させる必要があることなどが、複雑になる理由です。

今回は、妊娠・出産・育児に関して、休業中の社会保険制度・手続きについて紹介します。

従業員が妊娠したら

人事労務担当者
人事労務担当者

従業員が妊娠したら、まずどうしたらいいでしょうか?

シモデ
シモデ

出産予定日を把握することが必要です

人事労務担当者
人事労務担当者

予定日の前から休む人が多いですよね

シモデ
シモデ

多いけど、休むのは絶対ではありません

出産(予定)日の前42日間が「産前休業」

従業員の妊娠が分かったら、まずは出産予定日を把握することが必要です。

従業員が希望した場合には、出産予定日を含めて42日(双子以上なら98日)前から「産前休業」として休むことができます。

たとえば、出産予定日が9月1日なら、出産予定日を含めて42日前の7月22日が産前休業の開始日です。

出産(予定)日までの産前休業は、従業員の「希望」によるものです。

そのため、出産日当日まで働かれる方もいらっしゃいます。

ただし多くの方は出産予定日の42日前から休まれるのではないでしょうか。

出産日の後56日間が「産後休業」

出産した日の翌日から56日間は、「産後休業」として休むことができます。

これは、従業員の希望によるものではなく、「強制休業」です。

会社は、産後休業中の従業員を働かせてはなりません。

ただし、出産した日の翌日から42日が経過して、従業員から「働かせて欲しい」という請求があり、主治医からもOKが出ているのであれば、働かせることができます。

たとえば、出産日が9月1日なら、9月2日から10月27日までの56日間が産後休業です。

従業員から希望があり、主治医もOKと言っているのであれば、10月14日から働かせることができます。

健康保険の「出産手当金」

休んでいる期間は業務に従事していないわけですから、会社の賃金支払い義務はありません。

産前産後休業中の生活を保障するのが、健康保険の「出産手当金」です。

休んでいてお給料を受け取れない期間、出産手当金として通常のお給料額の3分の2程度を受け取れます。

なお、出産手当金は非課税です。

参考:全国健康保険協会「出産に関する給付」(外部リンクが開きます)

産前産後期間中の社会保険料

産前産後期間中は、会社負担分・本人負担分ともに社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)が免除されます。

支払いは免除されるものの、将来年金額を計算するときには、社会保険料を納めた期間としてカウントされます。

保険料が免除されるのは、産前産後休業を開始する月から、終了予定日の翌日の属する月の前月(産前産後休業終了予定日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までです。

たとえば、9月1日が出産予定日で7月22日から産前休業を取得し、予定通り9月1日に出産して10月27日まで産後休業を取得するのであれば、7月〜9月の3ヶ月分の社会保険料が免除されるということです。

参考:日本年金機構「従業員が産前産後休業を取得したときの手続き」(外部リンクが開きます)

シモデ
シモデ

妊娠・出産する従業員は、出産(予定)日前42日から後56日まで産前産後休業を取得できる。健康保険から出産手当金が支給され、社会保険料も免除されます

出産した後の育児休業

人事労務担当者
人事労務担当者

出産手当金で生活が保障されるんですね

シモデ
シモデ

社会保険料の免除とあわせて、忘れずに申請したいですね

人事労務担当者
人事労務担当者

産後休業のあとはどうすればいいでしょうか?

シモデ
シモデ

育児休業をとる人が多いです

育児休業を取得できる人

女性の育児休業の取得率は、82.2%と高い数値になっています。(厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」)

また、取得期間は下表の通りです。半数以上の方が10ヶ月〜1年半休業するようです。

育児休業取得期間割合(%)
5日未満0.5
5日〜2週間未満0.3
2週間〜1ヶ月未満0.1
1ヶ月〜3ヶ月未満2.8
3ヶ月〜6ヶ月未満7.0
6ヶ月〜8ヶ月未満8.8
8ヶ月〜10ヶ月未満10.9
10ヶ月〜12ヶ月未満31.3
12ヶ月〜18ヶ月未満29.8
18ヶ月〜24ヶ月未満4.8
24ヶ月〜36ヶ月未満3.3
36ヶ月以上0.5

育児休業は、取得したい日の1ヶ月前までに申し出てもらうことが必要です。

産前産後休業の申し出と一緒に伝える方が多いとは思いますが、遅くても出産日から20日経ったくらいには、育児休業を取得するか、取得するならいつまでかを確認した方がよいでしょう。

また、期間の定めのある契約(有期雇用契約)の方からの申し出は、以下の2つ両方に該当しなければ、法的には断ることが可能です。

  1. 引き続き雇用された期間が1年以上
  2. 子どもが1歳6ヶ月に達する日までに、雇用契約(雇用契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない

逆に言えば、有期雇用契約で入社からまだ1年経っていない人や、子どもが1歳半になるまでに雇用契約が終了することが決まっている人以外からの育児休業の申し出には、応じなければなりません。

法的に認められている育児休業の期間は、原則子どもが1歳になるまでです。

子どもが1歳の時点、1歳半の時点で保育所等に入所できなければ、それぞれ1歳半、2歳になるまで延長できます。

雇用保険の「育児休業給付金」

産前産後休業と同様、育児休業期間中も、従業員は業務に従事していないため、会社に賃金支払い義務はありません。

育児休業中の生活を保障するのは、雇用保険の「育児休業給付金」です。

過去に1年間程度雇用保険を支払っている従業員は、育児休業給付金を申請できます。

休んでいてお給料を受け取れない期間、育児休業給付金として通常のお給料額の3分の2(67%)程度を受け取れます。

ただし、6ヶ月経過後は2分の1(50%)程度に下がります。

なお、出産手当金と同様、育児休業給付金も非課税です。

参考:厚生労働省パンフレット「育児休業給付の内容及び支給申請手続について」(外部リンクが開きます)

育児休業中の社会保険料

産前産後と同様、育児休業期間中も、会社負担分・本人負担分ともに社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)が免除されます。

また、将来年金額を計算するときには、社会保険料を納めた期間としてカウントされます。

保険料が免除されるのは、育児休業を開始する月から、終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了予定日が月の末日の場合は育児休業終了月)までです。

たとえば、9月1日が出産日で10月28日から翌年8月31日まで育児休業を取得するのであれば、10月〜翌年8月の11ヶ月分の社会保険料が免除されます。

参考:日本年金機構「従業員が育児休業を取得・延長したときの手続き」(外部リンクが開きます)

シモデ
シモデ

有期雇用契約の一部の人以外は、原則子どもが1歳になるまで育児休業を取得できる。雇用保険から育児休業給付金が支給され、社会保険料も免除されます

男性の育児休業

人事労務担当者
人事労務担当者

男性が育児休業を取得したいときはどうすればいいでしょうか?

シモデ
シモデ

育児休業は男女ともに取得できるから、会社に申請することが必要です

人事労務担当者
人事労務担当者

長期間休む人はまだ少ないのが現状ですよね

シモデ
シモデ

1ヶ月くらいの取得を希望する人が多いようです

育児休業の取得期間

男性の育児休業の取得率は15.8%と、年々上昇しているものの女性の取得率と比較してかなり低い数値になっています。(厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」)

取得期間は下表の通りです。7割以上の方の休業期間が、2週間未満のようです。(厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」)

育児休業取得期間割合(%)
5日未満36.3
5日〜2週間未満35.1
2週間〜1ヶ月未満9.6
1ヶ月〜3ヶ月未満11.9
3ヶ月〜6ヶ月未満3.0
6ヶ月〜8ヶ月未満0.9
8ヶ月〜10ヶ月未満0.4
10ヶ月〜12ヶ月未満0.9
12ヶ月〜18ヶ月未満1.7
18ヶ月〜24ヶ月未満
24ヶ月〜36ヶ月未満0.1
36ヶ月以上

これに対して、希望していた期間は、育児休業を取得した人の半数が8日〜1ヶ月以内、取得できなかった人の約35%が1ヶ月以上となっています。(厚生労働省委託事業「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」)

育児休業は、取得したい日の1ヶ月前までに申し出てもらうことが必要です。

配偶者の出産予定日から取得することができます。

出産日が予定日より早まった場合で、従業員から育児休業取得日の繰り上げの希望があれば、対応することが必要です。

繰り上げの申し出が出産日まで1週間を切っていれば、「◯日から取得してください」と開始日を指定できます。

育児休業は、子どもが1歳になるまでに1回取得するのが原則です。

ただし、男性の育児休業のパターンとして、配偶者の出産日から56日の間に1回、その後配偶者が職場復帰する前後に1回など、2回に分けて取得できます。

また、配偶者も育児休業を取得している場合には、最長子どもが1歳2ヶ月になるまで育児休業を取得できるというパターンもあります。

参考:厚生労働省リーフレット「両親で育児休業を取得しましょう!」(外部リンクが開きます)

育児休業給付金と社会保険料

男性も、育児休業を取得した期間については、育児休業給付金が支給されますし、社会保険料も免除されます。

しかし、育児休業が短すぎると、どちらも適用されない可能性があります。

育児休業給付金は、1ヶ月のうちに11日以上働いてお給料を支払っていると、支給されない可能性があります。

育児休業を終了した日が月末以外の1ヶ月未満の取得だと、社会保険料が免除されません。

制度の大まかな内容は、育休取得希望者に説明できるとよいでしょう。

シモデ
シモデ

男性は、1ヶ月程度の育児休業取得を希望する人が多い。短期間だと育児休業給付金が受けられなかったり、社会保険料が免除されない可能性があります

まとめ

  • 原則、出産(予定)日前42日〜後56日が産前産後休業。とくに出産日の翌日から56日間は働かせてはいけない。お給料を支払わない期間は、出産手当金が支給される。社会保険料は会社・本人負担分ともに免除される。
  • 原則、子どもが1歳になるまで育児休業を取得できる。女性は産後休業の翌日、男性は配偶者の出産(予定)日が開始日になる。
  • 育児休業期間中は、育児休業給付金が支給される。社会保険料は会社・本人負担分ともに免除される。ただし、期間が短すぎるとどちらも適用されない可能性がある。
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男性は育児時間と生理休暇を取れない?労働基準法のルールと育児介護休業法との違いhttps://nudge.blog/ikuji-seiri/Sat, 21 Aug 2021 06:30:00 +0000https://nudge.blog/?p=1503

「男女平等!」と叫ばれて久しいですが、こと労働基準法においては、男性と女性が必ずしも同じ取り扱いがされているわけではありません。 労働基準法と、それとセットの労働安全衛生法の目的の一つは、労働者の身体を守ることです。 男 ... ]]>

「男女平等!」と叫ばれて久しいですが、こと労働基準法においては、男性と女性が必ずしも同じ取り扱いがされているわけではありません。

労働基準法と、それとセットの労働安全衛生法の目的の一つは、労働者の身体を守ることです。

男性と女性では身体が異なるため、その違いを反映したルールもあるのです。

今回は、労働基準法の「育児時間」と「生理休暇」についてご紹介します。

「育児時間」は女性のみ!?

人事労務担当者
人事労務担当者

労働基準法では男女で違うルールがあるんですね

シモデ
シモデ

「母体保護」を目的に、いくつかルールが作られていますね

人事労務担当者
人事労務担当者

たとえばどんなルールがあるのでしょうか?

シモデ
シモデ

「育児時間」というルールがあります

労働基準法には、「育児時間」という制度があります。

1歳未満の子どもを育てる「女性」が請求した場合は、1日2回それぞれ最大30分を子どもを育てるための時間に使うことができるという制度です。

この育児時間は、もちろん、就業時間の間に通常の休憩時間と別に請求するものです。

育児時間中は、業務に従事していないので、会社はその時間に対するお給料を支払う義務はありません。

通常、お給料は支払われないものの、サボりや遅刻とは違って、目的のある時間として請求できるわけです。

想定されている典型例は、職場近くの施設に子どもを預けていて、母乳・ミルクを与えたり様子を見にくといったことです。

今では在宅勤務をされていて、家で仕事をしながら育児もしている方もいらっしゃると思います。

在宅勤務中にも、正当な制度として育児時間を請求することは、可能なのです。

また、保育所が自宅の近くで職場からは遠いのであれば、朝や終業時間前に請求することもできます。

「1日1回60分」という請求の仕方も可能です。

このように、育児時間は「女性」だけが請求できるのですが、果たして実態に合っているのでしょうか?

労働基準法は、労働条件の「最低基準」を定めた法律です。

そのため、「少なくとも1歳未満の子どもを育てる女性労働者は」育児時間が必要だろうから、請求された場合には会社は対応しろ、という立て付けなのです。

個別の事情をみれば、男性が育児時間を取得して中抜けし、子どもの様子を見る必要がある事情もあるでしょう。

1歳以上の子どもを持つ女性も、同じだと思います。

労働基準法は最低基準なので、その基準より上の取り扱いをするのは自由です。

自社の従業員の事情に合っていないなら、たとえば3歳までの子どもを持つ従業員(男女)は育児時間を請求できるというルールを作ってもいいですし、1歳未満の子どもを持つ女性従業員の育児時間の給料は控除しないというルールを作ってもいいです。

最低基準を守るのは当然ですが、かたく考えすぎないことも大事だと思います。

なお、育児のための制度を「男女平等」に認めているのは、育児介護休業法です。

たとえば、朝子どもを病院に連れて行ってから出社するために始業時刻に遅れてしまう、といったときに使えるのは、「子の看護休暇の時間単位取得」という制度です。

男女ともに、小学校に入る前の子どもを育てている従業員は、子の看護休暇を取得できます。

2021年1月より、子の看護休暇は、時間単位でも取得できるようになりました。

育児時間とは異なり、中抜けではなく、原則始業・終業時刻に連続して取得するものです。

労働基準法は労働者の身体を守るという目的がある一方、育児介護休業法は、制度設計が主な目的なので、上記のような違いが現れているものと思います。

シモデ
シモデ

1歳未満の子どもを育てる女性労働者は、1日2回30分ずつ育児時間を取得できます

「生理休暇」は女性のみ!

人事労務担当者
人事労務担当者

育児時間っていう制度は知りませんでした

シモデ
シモデ

知ってたら使いたい人もいるかもしれませんね

人事労務担当者
人事労務担当者

男女で違うルールは他にありますか?

シモデ
シモデ

「生理休暇」について紹介します

労働基準法には、「生理休暇」という制度もあります。

生理日に働くのが著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その方を働かせてはいけないという制度です。

1日・半日単位でも、時間単位の請求でもOKです。

生理休暇も、業務に従事していないので、会社は、その日・その時間に対するお給料を支払う義務はありません。

生理休暇は、子どもという相手がいる育児時間と違って、その「困難度合い」は自己申告によるものです。

ここで注意が必要なのは、生理は、同じ女性であっても辛さや症状が全然異なるということです。

そのことを、女性自身も知らない可能性があります。

もし、生理休暇を取得した従業員の上長である女性が

「私は、生理で休むほど辛かったことなんてない」

と言ってたとしても、それはその人のみの症状に過ぎません。

一般論ではないのです。

これを聞いた男性管理者が「生理で休むのは大袈裟だ」と考えるのは誤りですので、ご注意ください。

女性の身体の基礎知識については、以下の記事をご覧ください。

生理休暇は、女性のみが取得できるものです。

更年期障害については、男性も何らかの症状が出るケースがあるといわれていますし、男性も月の中でホルモンバランスが変わるのでは?といった研究もあるようですが、一般的な知見にはなっていません。

育児時間と同様、労働基準法は「最低基準」なので、「少なくとも生理が辛い女性労働者は」仕事ができない日もあるだろうから、請求された場合には会社は対応しろ、というルールなのです。

生理休暇の取得率は、年々減少しており、現在は約0.9%です。(厚生労働省「令和2年度雇用均等調査」)

減少している理由は、不明です。

年次有給休暇の取得率が上昇している(年次有給休暇を取得しやすくなっている)ことと関係あるかもしれませんし、ないかもしれません。

ただ、生理休暇の代わりに年次有給休暇を取得しているとしても、年次有給休暇は身体を休めてリフレッシュすることが目的の第一であり、生理でしんどいときに取得して消化してしまうのは、なんだか理不尽な気はします・・・

また、「生理で辛いから休む」と上長に連絡するのも、かなり心理的なハードルが高いと思われます。

相当な信頼関係が必要です。

シモデ
シモデ

生理日に働くのが著しく困難な女性は、生理休暇を取得できます

「男女平等」とは?

賃金や地位など、雇用社会における男女格差の話をするとき、「男女平等」のみがフォーカスされることがあります。

男と女の扱いを同じにすればそれでいい

とか、

女性は管理職になりたがらないのだから賃金格差があっても仕方ない、差別は是正されている

といったことです。

「平等」とは、同じ扱いにすることです。

格差を是正するには、確かに必要なことです。

たとえば、「女性だから」という理由のみで教育訓練や昇進の機会を与えないことは差別にあたります。

このような状態に対して、同じ機会を与えるのは「平等にする」ことです。

ただし、「平等」だけでは足りないと考えます。

「公平」も必要です。

たとえば、女性管理職の割合が低いとして、「女性の昇進を拒否する制度はないのだから男女平等」という考え方もあります。

機会自体は平等に与えられているのだから、女性を優先して昇進させるのは、むしろ男性差別だという考え方もあります。

しかし、「同じ扱い」だけではむしろ差別につながるのであれば、「公平な扱い」が必要です。

Aは〇〇という特徴があるのだからA’の制度を適用し、一方でBは△△という特徴があるからB’の制度を適用する

というのは、「同じ扱い」ではありませんが、「公平な扱い」です。

したがって、労働基準法で定められた「育児時間」も「生理休暇」も、女性優遇ではないと考えます。

労働基準法は、労働条件の「最低基準」に過ぎません。

法律の内容を知った上で、自社に適したルールを検討するようにしましょう。

シモデ
シモデ

人事労務には、「平等」「公平」どちらも大切だと考えます

育児時間と生理休暇のルールまとめ

  • 1歳未満の子どもを育てる女性労働者は、1日2回それぞれ最大30分「育児時間」を請求できる
  • 生理日に働くのが著しく困難な女性は、「生理休暇」を請求できる
  • 人事労務には、「平等」も「公平」も大切
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