2025年が日本にとってどんな年か、聞いたことがある方もたくさんいらっしゃると思います。
2025年は、1947年〜1949年に生まれた、いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上になる年です。
そして、生産年齢人口は減少していきます。
会社の経営を続けていくには、このような大きな変化に対応しなければなりません。
今回は、2025年に向けた人事戦略を4つの項目に整理して紹介します。
2025年問題とは?
2025年問題っていうけど、たくさんの人が長生きするのはいいことではないですか?
確かにそうですね。でも、医療や年金をみんなで支えられるかが問題になってきます
子どもの数が減っていますよね
まずは2025年にどんなことが起きるかをみてみましょう
2025年、団塊の世代(1947年〜1949年生まれ)が、全員75歳以上になります。
総人口1億2,254万人のうち、75歳以上の方々の割合が約17.8%(2,180万人)となります。(内閣府「令和3年版高齢社会白書」)
このとき、医療費、介護、若年層の減少という大きく3つの問題が、より一層深刻になります。
ひとつ目は、医療費の問題です。
75歳以上は、医療制度において「後期高齢者」と呼ばれます。
後期高齢者の医療費は、下表の通り、公費負担の割合が増え、自己負担割合が減ります。
制度上の区分 | 公費負担 | 自己負担割合 |
---|---|---|
現役世代 (協会けんぽ) | 16.4% | 3割 |
前期高齢者 | 約33% | 65歳〜69歳:3割 70歳〜74歳:2割 |
後期高齢者 | 約50% | 1割 |
公費と後期高齢者の保険料で足りない分(約40%)は、現役世代と前期高齢者の保険料で賄います。
医療費は、年々増加していて、国民の所得に対して10.73%を占めています。(厚生労働省「平成30年度国民医療費の概況」)
高齢者と医療費の増加に比例して、国民皆保険制度の支え手であるサラリーマンの健康保険料の保険料率も上昇しています。
1989年(平成元年)の8.3%から、2021年には介護保険料と合わせて11.8%まで上昇しています。
介護保険料とは、40歳〜64歳の方が納めるものです。
社会保険料の増加は、現役世代のお給料が上がらない原因の一つといわれています。
ふたつ目は、介護の問題です。
平均寿命と健康寿命の差は、男性は約8年、女性は約12年ありますので、この間に何らかの支援や介護が必要になる可能性は大いにあります。(内閣府「令和3年版高齢社会白書」)
実際に、要支援・要介護と認定された方の数も、年々増加しています。(内閣府「令和3年版高齢社会白書」)
介護保険事業にかかる費用も増加していて、それに比例して、既述のとおり介護保険料率も上昇しています。(厚生労働省ホームページ)
しかも、2025年には、皆が納める介護保険料が2012年と比較して2倍弱必要になると見込まれています。
(悲観的に見積もって)2025年に介護保険料率が3%まで上昇したとすると、厚生年金保険料率18.3%(2017年9月以降据え置き)と健康保険料率約10%と合わせて、お給料の31.3%が社会保険料になるのです(原則、会社と従業員で折半)。
良かれと思って会社がお給料を上げても、社会保険料の重みを知らなければ、従業員から見たら全然手取りが増えておらず、大して感謝もされないかもしれません。
三つ目は、若年層の減少の問題です。
高齢者が増え、医療費が増え、介護事業費が増えていても、支え手になる現役世代が増えていれば問題ありません。
しかし、出生数が増える見込みは全くありません。
生産年齢人口(15歳〜64歳)の推移をみてみると、1995年の8,716万人をピークに減少しています。
0歳〜14歳の減少も著しいですね。2025年には1955年(団塊の世代が子どものころ)の半分くらいしか子どもがいない社会になります。
現在の国民皆保険制度、後期高齢者医療制度、介護保険制度、財源負担を維持しようと思えば、少ない若者が多くの年配者を支えるしかありません。
2025年は団塊の世代が75歳以上になる年。増加する医療費、介護事業費を、減少する現役世代が支える構図が、一層顕著になります
若者の採用
長生きはいいことだけど若者は減る一方ですね
経営を続けていくには若者をどう採用していくかが重要ですね
採用戦略はどう立てたらいいでしょうか?
ギャップをいかに小さくするかが大切だと思います
若者の採用は、社長さんが経営を続けて、ゆくゆくは会社をどうしたいのかによると思います。
自分と一緒に役員や従業員も歳を取り、いずれは会社をたたむか事業譲渡するか・・・と想定されていらっしゃるなら、特段、若者の採用に力を入れなくてもいいと思います。
しかし、下の世代も採用して会社を存続させていこうと思うのなら、若者の採用に注力することからは、逃れられません。
人は、何を理由に就職する会社を決めるかを見てみましょう。
年齢別のデータではありませんが、中途で転職した人(有期は含む、パートは除く)が勤める会社を選んだ理由は、下表の通りです。(厚生労働省「2019年雇用動向調査」より作成)
現在の勤め先を選んだ理由 | 男 | 女 | 計 |
---|---|---|---|
仕事の内容に興味があった | 501.4(22.6%) | 567.2(22.3%) | 1,068.5(22.4%) |
能力・個性・資格が生かせる | 338.7(15.3%) | 344.7(13.5%) | 683.4(14.4%) |
会社の将来性が期待できる | 116.6(5.3%) | 48.2(1.9%) | 164.7(3.5%) |
給料等収入が多い | 127.5(5.8%) | 149.8(5.9%) | 277.3(5.8%) |
労働時間、休日等の労働条件が良い | 259.9(11.7%) | 564.1(22.1%) | 824.0(17.3%) |
通勤が便利 | 177.3(8.0%) | 328.1(12.9%) | 505.4(10.6%) |
とにかく仕事に就きたかった | 264.9(12.0%) | 280.0(11.0%) | 544.9(11.4%) |
その他の理由(出向等を含む) | 426.8(19.3%) | 264.3(10.4%) | 691.1(14.5%) |
仕事の内容に興味を持たせ、応募者の能力・個性・資格を生かし、労働条件を整える。
そして、それをきちんと応募者に伝わるようにすることが、会社にとっていい人材を採用するために大事なことの一つだということが分かります。
理想に聞こえるかもしれませんが、当たり前なことでもあります。
ただ、意外にもお給料の高さを重視する方は多くないようです。
お給料が高ければハードワークを想像するので、多数の人が選ぶ理由ではないのかもしれません。
一方で、人は何を理由に会社を辞めるのでしょうか。
こちらは、年代別のデータがあります(ただし、パートも含みます)。まず男性です。
前の勤め先を辞めた理由 | 〜19歳 | 20〜24歳 | 25〜29歳 | 30〜34歳 | 35〜39歳 | 40〜44歳 | 45〜49歳 | 50〜54歳 | 55〜59歳 | 60〜64歳 | 65歳〜 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
仕事の内容に興味を持てなかった | 5.6 | 7.6 | 9.1 | 2.5 | 3.9 | 4.4 | 4.6 | 2.8 | 2.4 | 4.8 | 2.2 | 4.8 |
能力・個性・資格を生かせなかった | 0.7 | 5.3 | 4.9 | 6.3 | 11.0 | 8.6 | 5.9 | 5.7 | 5.1 | 1.1 | 2.4 | 5.4 |
職場の人間関係が好ましくなかった | 14.5 | 17.4 | 8.0 | 7.1 | 6.4 | 12.1 | 9.4 | 8.2 | 11.8 | 6.4 | 4.0 | 9.3 |
会社の将来性が不安だった | 0.6 | 4.1 | 8.4 | 11.8 | 11.1 | 14.4 | 10.7 | 6.4 | 4.8 | 2.3 | 0.1 | 7.3 |
給料等収入が少なかった | 8.9 | 9.3 | 13.5 | 11.7 | 9.5 | 7.4 | 8.8 | 12.7 | 6.7 | 2.2 | 1.6 | 8.7 |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 33.0 | 17.8 | 9.0 | 11.1 | 14.0 | 11.2 | 12.2 | 8.1 | 5.0 | 4.0 | 6.9 | 11.2 |
結婚 | 0.0 | 0.1 | 2.2 | 0.7 | 0.1 | 0.1 | 0.0 | ー | ー | ー | ー | 0.4 |
出産・育児 | ー | 0.1 | 0.8 | 1.4 | 0.6 | 0.3 | 0.3 | ー | ー | ー | ー | 0.4 |
介護・看護 | 0.0 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.4 | 0.7 | 2.3 | 0.3 | 2.8 | 1.5 | 0.4 | 0.7 |
定年・契約期間の満了 | 0.8 | 6.6 | 8.0 | 3.6 | 3.4 | 3.4 | 9.2 | 8.2 | 11.3 | 60.9 | 65.5 | 16.6 |
会社都合 | 0.4 | 2.3 | 5.7 | 7.3 | 7.4 | 5.9 | 7.6 | 10.5 | 15.6 | 4.0 | 4.5 | 6.3 |
その他の理由(出向等を含む) | 25.0 | 28.8 | 29.4 | 35.5 | 30.6 | 29.3 | 28.7 | 35.1 | 32.8 | 12.3 | 12.2 | 27.4 |
20歳〜39歳の10%以上を赤字にしています。
「給与等収入が少なかった」と「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」は、各世代9%以上なので、よく選択された理由だということが分かります。
また、「職場の人間関係が好ましくなかった」は、20〜24歳の、より若年層に選ばれています。
30代になると会社の全体が見えてきて、「会社の将来性が不安だった」を理由に辞める人が比較的多くなっています。
女性はどうでしょうか。
前の勤め先を辞めた理由 | 〜19歳 | 20〜24歳 | 25〜29歳 | 30〜34歳 | 35〜39歳 | 40〜44歳 | 45〜49歳 | 50〜54歳 | 55〜59歳 | 60〜64歳 | 65歳〜 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
仕事の内容に興味を持てなかった | 5.9 | 4.2 | 5.0 | 6.3 | 6.6 | 4.9 | 4.9 | 8.0 | 4.1 | 5.3 | 1.3 | 5.4 |
能力・個性・資格を生かせなかった | 1.1 | 5.3 | 3.2 | 3.3 | 2.1 | 3.2 | 2.3 | 2.1 | 2.6 | 5.4 | 2.4 | 3.1 |
職場の人間関係が好ましくなかった | 21.9 | 17.6 | 13.3 | 12.1 | 13.9 | 12.3 | 15.2 | 18.5 | 13.8 | 15.9 | 8.4 | 14.8 |
会社の将来性が不安だった | 1.2 | 5.5 | 7.6 | 4.8 | 4.1 | 3.5 | 3.5 | 2.4 | 1.3 | 3.5 | ー | 4.1 |
給料等収入が少なかった | 3.9 | 7.1 | 10.0 | 10.9 | 10.0 | 14.1 | 13.0 | 9.6 | 5.8 | 1.6 | 5.0 | 9.4 |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 10.9 | 17.7 | 18.6 | 13.5 | 14.8 | 10.7 | 11.0 | 9.3 | 6.5 | 4.8 | 5.4 | 12.5 |
結婚 | 0.0 | 0.8 | 6.6 | 9.9 | 1.0 | 1.8 | 0.7 | 0.5 | ー | ー | ー | 2.4 |
出産・育児 | ー | 0.2 | 3.2 | 6.9 | 4.8 | 0.9 | 0.9 | ー | ー | ー | ー | 1.9 |
介護・看護 | 1.2 | 1.9 | 0.5 | 0.1 | 1.0 | 0.3 | 0.9 | 3.6 | 4.2 | 1.2 | 4.0 | 1.4 |
定年・契約期間の満了 | 6.2 | 2.6 | 5.4 | 8.3 | 8.9 | 11.1 | 13.9 | 11.7 | 11.9 | 31.1 | 32.1 | 10.7 |
会社都合 | 2.6 | 1.8 | 4.0 | 2.7 | 5.3 | 10.6 | 4.2 | 10.9 | 7.0 | 5.9 | 14.7 | 5.8 |
その他の理由(出向等を含む) | 42.6 | 32.4 | 21.2 | 21.1 | 27.0 | 25.9 | 28.8 | 23.1 | 40.6 | 13.0 | 24.4 | 26.6 |
20歳〜39歳の10%以上を赤字にしています。
「職場の人間関係が好ましくなかった」「給与等収入が少なかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が、まんべんなく選ばれています。
特に若年層で「職場の人間関係が好ましくなかった」ことを理由に辞める人が多いというのは、男性と共通しています。
会社を選ぶ理由と辞める理由を合わせて考えると、仕事の内容に興味を持ち、能力等を生かせると思って入社して、その予想が当たっていても外れていても、あまり辞める理由にはならないようです。
この2点にはそんなに不満ではなかったとしても、人間関係の悪さや収入の少なさ、労働条件の悪さを理由に、若年層は会社を辞めてしまう傾向があります。
特に、収入の少なさは、入社前は重視していなかったものの、「この仕事でこの給料か」や、「あの人は自分よりもらっているのに・・・」といった、周囲の影響や何かと比較することで不満に思うのかもしれません。
また、給料以外の労働条件は、「よさそうと思って入社したが意外と悪かった」というように、会社を選ぶ理由にも辞める理由にも選択されています。
つまり、採用においては、以下の3点を確認することが重要だと考えます。
- 自社の仕事の内容と応募者の興味が合致しているか
- 自社が求めているものと応募者の能力・個性・資格が合致しているか
- 労働条件を整えているか、応募者の重視する労働条件は何か
そして、採用後の労務管理においては、以下の3点が重要だと考えます。
- 職場の人間関係についての理解者がいるかを把握する
- 収入への不満に耳を傾ける。もし的外れならば自社の実情に合わせて修正する
- 労働条件を整備し、社長にも従業員にも分かりやすい運用にしておく
採用前後で会社と応募者のギャップをいかに小さくできるか。無事に採用できたとしても、人間関係・収入・労働条件への不満で若者は会社を辞めてしまいます
誰にマネジメント・育成させるか
若者の定着のためには、仕事の魅力を語るだけでは足りないんですね
社長さんは仕事の魅力はいくらでも語れると思いますけどね
無事に採用できたら次は育成ですね
「どのように」より「誰が」が大切だと思います
若ければ若いほど、人間関係を理由に辞めてしまう人が多いことを考えると、どのように育成するかももちろん大切ですが、誰が育成を担当するのかが、より大切なのではないかと思います。
自社で、いったい誰に人を育成させるかを検討するための視点は、3つあると思います。
ひとつ目は、チームを管理する「マネージャー」には誰が適しているか、です。
リーダーとマネージャーの違いには、いろいろな定義があります。
個人的にしっくりくるのは、次の定義です。
- リーダーは、複雑だが同じベクトルを持つ人脈を背景に実行力を構築する
- 企業や組織の中の階層を活用して職務遂行に必要な人脈を構築する
リーダーはビジョンを掲げて実行し、マネージャーはそのビジョンに合わせてチームを管理するという役割の違いがあります。
リーダーに適した人がマネージャーに適しているかは分からないのと同時に、プレイヤーとして優秀な人がマネージャーに適しているかも分かりません。
特に、自分で高い成果を上げられる人が人材育成を担当すると、パワハラと捉えられかねません。
ハラスメントは、加害者には自覚がないケースも多いので要注意です。
「自分がこう指導して欲しかった」と、目の前の若者にその指導方法が合うかどうかは分かりません。
また、「これくらいの指導に耐えられて当たり前だ」という考え方も、世代間ギャップを生む可能性があり、危険だと思います。
ふたつ目は、マネジメントする人のスキルをどう高めさせるか、です。
マネジメントする人、チームを管理する人、人材を育成する人を決めたら、その人のスキルも高めることが重要だと思います。
もちろん、もともと適性を持っている可能性は高いと思いますが、学ぶ機会も常に与えるべきだと思います。
人材育成の問題点として、「人材育成をしても辞めてしまう」と「人材育成を行う時間がない」が挙げられています。(厚生労働省「平成29年版労働経済の分析」)
ひとつ目の問題点は、既述した若者が会社を辞めてしまう理由や、育成担当のスキルにおける課題を解消することが、解決策として挙げられると思います。
ふたつ目の問題点は、プレイヤーとして優秀な者を育成担当にしていないか、育成担当が適切かを見直すことが、解決策として挙げられると思います。
最後に、合わなければ担当を外せるか、です。
組織が硬直化する理由の一つが、「降格させないこと」だと思います。
優秀な係長が、優秀な課長になるとは限りません。
係長や課長がリーダーやマネージャー、プレイヤーの役割を担っている会社もあると思いますが、数少ない若者にとって、能力と役職が合ってない人に指導されるのは幸福とは言えません。
また、役職者にとっても幸福ではないと思います。
降格は、必ずしも懲戒処分に該当するのではなく、会社の人事権で行うことができます。
ただし、給与を下げることについては、原則、従業員の個別同意が必要です。
たとえば、役職手当が支払われる条件を就業規則等に明記していれば、降格とともにその手当を外すことも可能ですが、そうでなければ注意が必要です。
自社が何を優先するのか(勤続年数が長い・年長である・役職者である人を守るのか、従業員から理解を得て降格もよしとする風土を作るか)によっても、取るべき戦略とその程度が変わると思いますので、ぜひ検討してみてください。
マネージャーや人材育成に適した人を選び、スキルを高める機会を与えること。役職を付与していて、合わないのなら降格という手段も検討することという3つの視点が大切です
介護休業等に対応する
若者にとって人間関係は重要だから、きっと誰が育成するかも大切なんですね
何を言うかより誰が言うかで、素直に聞けるかどうか変わることありますよね
2025年に向けて他に考えなきゃいけないことはありますか?
介護の制度を頭に入れておくことが大切だと思います
育児休業は、女性だけでなく男性の取得も促進されるようになりました。
育児休業の手続きは、会社でも定着してきているのではないかと思います。
(ただし、下図の通り、従業員への調査ではマタハラを受けたと回答している方は一定数います。(JILPT「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査」))
介護休業は、どうでしょうか。
介護休業の取得率は3.2%と、低水準です。(総務省「平成24年就業構造基本調査」)
まだ、男女ともに介護で離職する人も、あまり多くはありません。
介護休業の手続きが定着している会社も、あまり多くはないのではないでしょうか。
ただ、2025年に団塊の世代が75歳以上になります。
75歳以上は、平均して男女ともに平均寿命を終えています。
介護が必要な人もいっきに増える可能性があります。
そして、介護の担い手も必要になります。75歳以上の子ども世代ですと、45歳前後以降の方々で、介護にあたる人が多くなるのではないでしょうか。
そうすると、介護休業の取得を要する従業員も増えることが予想されます。
介護休業等の制度の趣旨は、育児休業等とは若干異なります。
育児休業において、特に女性は、子どもが原則1歳になるまで長期間休むことが一般的となっています。
しかし介護は、いつ終わるか分からないものです。
そのため、短期間の介護休業を取得することで、従業員が、介護する体制と仕事を継続する体制を整えることが目的とされます。
主な介護休業等の制度は、下表の通りです。
制度 | 概要 |
---|---|
介護休業 | 対象者が申し出たら、対象家族1人につき3回まで、合計93日休業させる |
介護休暇 | 対象者が申し出たら、1年度当たり5日(対象家族が2人以上なら10日)まで休暇を取得させる |
所定外労働の制限 | 対象者が請求したら、就業規則や労働契約書で定めた所定労働時間を超えて働かせてはいけない |
時間外労働の制限 | 対象者が請求したら、1ヶ月当たり24時間、1年当たり150時間を超える時間外労働をさせてはいけない |
深夜業の制限 | 対象者が請求したら、原則、22時〜翌5時に働かせてはいけない |
短時間勤務制度等 | 会社は、短時間勤務、フレックスタイム制、時差出勤、介護サービス費用の助成等を導入しなければならない |
表中の「対象者」とは、「要介護状態にある対象家族(祖父母、父母、兄弟姉妹、子、孫、配偶者、配偶者の祖父母)を介護する従業員」を指します。
要件や制度の詳細については、厚生労働省のサイトが参考になります。
厚生労働省「介護休業制度」(外部リンクが開きます)
介護による離職を防ぐために、来る2025年に向けて介護休業等の制度を軽く頭に入れておき、必要なときすぐに対応できるようにしておきましょう。
自社の従業員の介護離職を防ぐには、少なくとも介護休業等の制度を頭に入れておき、従業員が介護をしなければならなくなったら、すぐに対応できるようにしておきましょう
高齢者の雇用確保と40歳以上の社員の扱い
2025年以降は介護をする従業員が増える可能性がありますね
雇用を維持したいなら制度に関する情報発信も必要ですね
考えなきゃいけないことがたくさんありますね・・・
会社の方向性によって大事にすることが変わりますね
会社に求められる高齢者の雇用確保は、年金制度と連動しています。
年金は、受給年齢が65歳まで引き上げられている最中ですが、2025年に引き上げが完了します。
そうすると、次は70歳への引き上げでしょう。
現在は、65歳までの雇用確保が会社に義務づけられています。
内容は、以下の3つのいずれかを選択します。
- 65歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 65歳までの継続雇用制度の導入
そして、70歳までの雇用確保が努力義務です。2025年以降に義務化される可能性が高いと思います。
努力義務の内容は、以下の5つのいずれかを選択するものです。
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に、会社が実施・委託する社会貢献事業等に従事できる制度の導入
会社の経営を続けていくならば、限りある人件費の中で、高齢者の雇用継続と40歳以上の社員の扱い、そして若者の採用において、どう優先度を決めるのかを検討しなければなりません。
雇用を流動化させたいのなら、早期退職制度を導入するのは一つの手だと考えます。
40歳以上の社員を70歳まで雇用すると考えると、30年もの長期間になります。
従業員にとっては一定程度生活を守りながら次のキャリアに進むことができ、会社にとっては人材を流動化できるというメリットがあります。
そして、会社の方向性や課題の優先度、戦略を検討するとき、どう決めるかです。
社長さんが考えるのは基本ですよね。
でも、会社の経営を継続していくなら、経営チームを作っていくかどうかを考えるタイミングがやってくると思います。
創業当時は社長さん1人のリーダーシップに皆が頼っていた構図だったと思いますが、社長さんも考えなければいけないことが増え、専門性も分かれてくるので、やはり物事を決めるのに複数人いた方がいいタイミングが来るのだと思います。
経営チームのメンバーを社内から選ぶのであれば、部長等と兼務させるのではなく、役員に専念できる体制を整えるべきでしょう。
会社の方向性によって、高齢者の雇用確保、40歳以上の社員の扱い、若者の採用のどこを優先するかが変わる。経営の継続が目標ならば、経営チームをつくり戦略を立てるのも一つの方法です
2025年に向けた人事戦略まとめ
- 若者の採用においては、仕事の内容や能力・個性・資格が生かせること、労働条件が重視される。離職においては、人間関係、収入、労働条件が理由になる。
- マネジメントや人材育成担当は、「マネジメント」に適しているか、マネジメント能力をどう高めるか、合わなければ担当を外せるかを視点に検討する。
- 2025年以降は75歳以上を親にもつ45歳前後以降の従業員が介護を担う可能性がある。介護休業等の制度の内容を頭に入れておこう。
- 高齢者の雇用確保が求められていることと雇用の流動化のバランスをどうとるか。40歳以上の社員を対象に早期退職制度を設けることも考えられる。
- 会社の方向性や優先度、戦略を決めるために経営チームをつくるのも一つの方法。